〈時代の正体〉やまゆり園事件と強制不妊手術【中】身勝手「善意」の暴走|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉やまゆり園事件と強制不妊手術【中】身勝手「善意」の暴走

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/07/27 02:00 更新:2018/11/12 19:00
【やまゆり園事件取材班=川島秀宜、石川泰大】津久井やまゆり園(相模原市)で入所者19人が殺害された事件から2年。起訴された植松聖被告(28)は、なおも命の優劣に偏執する。旧優生保護法(1948-96年)に基づく強制不妊手術の証言を引き、事件に潜む優生思想と向き合う。3回連載の2回目。


 〈私を含め、周囲の人たちはみんなあなたの幸せを望んでいたはずです〉

 22年前、宮城県の飯塚淳子さん=仮名、70代=に中学時代の担任教諭から私信が届いた。飯塚さんは、16歳で卵管を縛る不妊手術を強制された。半世紀前の弁明が、後半につづられていた。

 〈それが、結果として、あなたに大きな不幸をもたらしたとは、本当に残念でなりません。善意が裏目に出たことに大きな衝撃をうけ、今更ながら自責の念にかられております〉

 1年後。貧困から飯塚さんを職親に預けた父親からも便りがあった。80歳で亡くなる直前だった。

 〈早く手術した方が安全だと通知があったのだ 妊娠されてからでは遅い〉

 飯塚さんは手術直前、軽度の知的障害とする無実の知能判定を受けていた。父親は、将来を思案した職親と民生委員から同意を迫られていた。

 〈印鑑押せとせめられてやむなく印鑑押(さ)せられたのです 優生保護法にしたがってやられたのです〉

 手術後、生理のたびに激痛で転げ回った。結婚しても子宮外の妊娠を余儀なくされ、生死をさまよった。腫瘍を患い、子宮と卵巣を摘出された。

 「幸せ」「善意」「安全」。2人が並べた美辞にぞっとする。

 「なんて身勝手なの。人生を狂わされたのは、わたし自身なのに」


 半世紀前。精神科医の岡田靖雄さん(87)=東京都=は、黒板に1人の名前を書き出した。中度知的障害の30代とおぼしき女性患者だった。勤務先の精神科病院は年2回、医局に強制不妊手術の候補者を挙げるよう課していた。...

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