【IR考 横浜誘致の是非】「人の不幸で成長」許すな 日弁連カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ座長・新里宏二弁護士|カナロコ|神奈川新聞ニュース

【IR考 横浜誘致の是非】「人の不幸で成長」許すな 日弁連カジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループ座長・新里宏二弁護士

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/07/19 11:00 更新:2018/08/02 19:01
【時代の正体取材班=田崎 基】多重債務者問題に取り組み続けて30年余り。ギャンブル依存から抜け出せず、仕事を失い、家族を崩壊させる人の脆(もろ)さを知る新里宏二弁護士はいま、最大級の警戒を呼び掛ける。「人を不幸にして、国が成長していいはずがない」

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 「カジノによって海外から人を呼び込み、経済成長しよう」

 この発想が頭にくる。賭博規制を緩和し、外資を呼び込み、利益を生み出す。カジノ業者が手にする途方もない利益はどこからくるのか。賭けでスッてしまう人の不幸ではないか。

 そもそも外国人利用者は全体の2~3割にとどまるという試算もある。そうであれば、海外から人を呼ぶという構想自体が崩れる。裏に透ける悲惨な結果は日本人の失われる富だ。個人の貯蓄や退職金、年金が吸い取られることになるだろう。

 「カジノでもうかる」という利益面と、一方で「ギャンブル依存症患者が増えるからダメだ」という賛否の対立構造が描かれているが、この視点だけではカジノの是非を語るには全く足りない。「それでは依存症対策を手厚くしましょう」という解決策の誤導を生むだけだ。

 多重債務者問題に長く向き合ってきたからよく分かる。カジノ問題の根底にあるのは「ギャンブル依存」だけではない。多重債務者を生み出し、失業者も増える。犯罪に手を染める者もいる。暴力団がカジノビジネスに関与してくる可能性もあるだろう。

 そうした日本社会全体が被るであろう「負」の影響について調査・検証がまったく欠けている。

 まともに試算すれば甘受しがたい結果になるであろうし、そうした「負」の要因を一つひとつ解決しようとすれば参入しようとするカジノ業者にとってメリットは著しく減退し、そっぽを向かれる。だから政府はそうした本質的な議論を避けているとしか思えない。

惨状の地


 では他国の状況はどうだろうか。パチンコを全面禁止している韓国には国内に17カ所のカジノがある。このうち自国民(韓国人)が入場できるのは、ソウルから東へ約200キロの距離にある「江原(カンウォン)ランドカジノ」1カ所だけ。ここに2015年、視察に行った。

 林立する雑居ビルは1階が質屋、2階は風俗店、3階が簡易宿泊所という建物が少なくない。電話ボックスには貸金業者のチラシがべたべたと貼られていた。

 街路には依存症患者を救おうとする団体が「お父さん、お母さん自殺しないでください」というポスターを張ったワゴン車を止め、その場で相談を受けられるようにしていた。

 もともとこの街は炭鉱で成り立っていたという。廃鉱に伴い、住民たちは選択を迫られた。「核廃棄物の最終処分場」か、それとも「カジノ」か-。雇用が増え、税収も増加する。そんな触れ込みで街の再建を託し、「カジノ」を選んだ江原地区だったが2000年の開業以来、街は一変した。今では失敗だったと住民たちは感じているという。日本も同じ轍(てつ)を踏むのではないか。そう思えてならない。

 一方で成功例として挙げられるのがシンガポールだ。だが富裕層を多く抱える中国と地続きの同国と、島国の日本は地政学的に大きく異なる。都市国家ならではの国際競争力を磨き、その特性を生かして呼び水の一つとしてシンガポールは10年にカジノを解禁した。

 だが10年と16年の観光客数の増加率を比較すると、シンガポールの169%に対し、日本は386%と飛躍的に急拡大している。日本にカジノが必要なのか。懐疑は膨らむばかりだ。

 そのシンガポールでも自国民の利用は厳しく制限している。...

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