多様な家族の形伝える |カナロコ|神奈川新聞ニュース

多様な家族の形伝える 

母2人と子どもの家庭描いた米国絵本 日本語版この秋刊行

2009年に米国のPhilomel Booksから発行された 「In Our Mothers’ House」。 日本語版は2300円前後での発売を予定している

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 2人の母親と血のつながりがない子どもたちの日常を描いた米国の絵本「In Our Mothers’House(ママたちの家で・仮)」(パトリシア・ポラッコ作)の日本語版が、この秋刊行される。深い愛情で結ばれる一家の姿は、家族の形がどうあれ幸せを左右しないことを改めて伝えてくれる。 

 料理をしたり、ハロウィーンに仮装をしたり。女性同士のカップル、マーミーとミーマーは、それぞれ肌の色が違う3人の子どもとにぎやかな毎日を過ごす。彼女たちをかたくなに受け入れようとしない隣人も1人いるが、周りはそれに同調しない。地域に溶け込みながら、ありふれた日常を送る一家。絵本はそうした家族の姿を自然に描いている。
 
 日本語版を制作するのは、翻訳出版を手掛けるサウザンブックス(東京都)。制作は同性愛者ら性的少数者が自分を肯定する一助となるような世界の本を出版する、同社の「PRIDE叢書(そうしょ)」と呼ばれるシリーズの一環。今年5月、インターネットで資金を集めるクラウドファンディングで目標金額に達し、刊行が決まった。
 
 「家族の形が多様だということを多くの人に伝えたい」。叢書の編集主幹を務めるライターの宇田川しいさんは、日本語版を世に出す狙いをこう話す。
 
 同性パートナーと共に子どもを育てている人は国内外にいる。それに限らず、ひとり親家庭や祖父母と暮らす子、里親や養子など、父母との血のつながりに依拠しない家族は決して珍しくない。父親と母親がいるのが「正しい」との思い込みが、そんな多彩な家族のありようを見えにくくしていると感じてきた。

 自身は同性に恋愛感情を抱くゲイ男性。この作品で最も心に響いたのが物語の終盤、おばあちゃんになったマーミーとミーマーが、ほほ笑みながら寄り添う場面だ。「共に年を重ね、幸せにその人生を終える同性カップルのモデルってほとんど提示されていないから」。だからこそ、本作が行く先を描けず不安を抱く若い同性愛者らの希望にもなると信じる。
 
 「子どものころの私が望んでいたのはこういう未来です」「同性同士のカップルに未来はないと思い込んでいた高校生の自分に、この絵本を見せて『大丈夫だよ』と言ってあげたい」
 
 およそ3カ月で471人が支援を表明したクラウドファンディングには、応援や共感を込めた200以上のコメントが寄せられた。「これまで、こういう声を拾う場所がなかったんだ」。偏見の中で吐き出すことができなかったであろう心の内に触れ、同社社長の古賀一孝さんも日本語訳を手掛ける意義をかみしめた。

 「いろいろな家族がいて当然だということが分かれば、偏見もなくなっていくと思うんです」と宇田川さんは言う。そして続けた。「さまざまな気付きや救いが得られるこの作品を、一人でも多くの人に届けたい」
 
 幸せに満ちあふれた一家を色彩豊かに描いた本作の日本語版は、10月以降、全国の書店や図書館に並ぶ予定だ。問い合わせは、サウザンブックスのホームページから。

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