民謡「三崎甚句」の“幻の円盤”地元で発見/三浦|カナロコ|神奈川新聞ニュース

民謡「三崎甚句」の“幻の円盤”地元で発見/三浦

民謡「三崎甚句」のレコードを発見した渡辺さん=三浦市三崎町諸磯

全国有数のマグロ水揚げ基地、三浦市三崎の三崎港の情景を歌った民謡「三崎甚句」の初版とみられるレコードが、市内の民家で見つかった。レコードの存在は知られていたが、第2次世界大戦の混乱などで長年にわたり行方知れずになっていた“幻の円盤”。口承で伝えられてきただけに、「三崎甚句」の変遷を知る貴重な資料になりそうだ。

♪えー 海の宝えよー 山ほど着くよおー

レコードが回りだすと、太鼓と三味線の調べに乗って女性の伸びやかな歌声が流れてくる。大漁旗をなびかせたマグロ船が次々と入港し、水揚げに活気づく三崎港が目に浮かぶようだ。

同市三崎町諸磯の酒販店「渡辺商店」店主の渡辺征男さん(69)が自宅の棚を整理していた際に見つけた。祖父の故勝蔵さん(享年59)の思い出の品といい、浪曲や漫才のレコードに紛れていたという。

発見されたレコードは直径25センチ。黒色のレーベルに曲名のほか、歌い手の「壽才三」という芸者の名前が右書きで記されている。昭和7(1932)年に「日本ポリドール蓄音器商会」から発売された。歌詞カードはなかったという。

現在歌われている「三崎甚句」とメロディーはほぼ同じだが、テンポはやや速め。歌詞は聞き取りにくい部分が多く、どのような内容かはっきりしない。

同社の流れをくむ、大手レコード会社「ユニバーサルミュージック」(東京都港区)は曲名やレコード番号、歌手名などから原盤と判断。広報担当者は「社内にも残っておらず、戦前のレコードとして記録的な価値がある」と説明する。

市教育委員会が所蔵する資料に「昭和7年に当時三崎の美妓、才三姐さんがレコードに吹き込まれて…」と記述が残るだけで音源は存在していなかった。昭和7年採録の初版とみられるレコードが見つかったのは今回が初めてだという。

今回の発見について、かつて「三崎甚句」をリリースしたことのある民謡歌手の岩井きよ子さん(68)=横須賀市平作=は「当時の活況が伝わってくる。あらためて、これからも世に残していきたい大切な歌」と感慨深げな様子。

三浦市民謡協会の土田成明会長(53)は「民謡は時代とともに変わるもの。当時との違いで庶民にどれだけ親しまれ、歌われてきたか分かるのではないか」と話す。

「地元に伝わる民謡。多くの人に聴いてもらえたらうれしい」と渡辺さん。希望者には「喫茶・骨董(こっとう)さんなべ茶屋」(同市三崎町諸磯)で公開する。午前9時~午後6時。定休日は火曜日。問い合わせは、同店電話046(882)6779。

◆三崎甚句 三浦市三崎地区に伝わる民謡。作者不詳。港町の情緒が巧みに表現され、現在もお祭りや宴会などで頻繁に歌われている。口承で伝えられてきたことから、歌い手により節回しや歌詞が微妙に異なるのが特徴という。

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