支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 サービスを守る(3)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 サービスを守る(3)

合わない採算、事業者も苦慮

2017年1月、営業当時のエニー介護サービスヘルパーステーションの訪問介護の様子

 山北町唯一の訪問介護事業所として重責を担ってきたが、基準のヘルパー数を確保できなかった。「エニー介護サービスヘルパーステーション」は昨年6月末で休止となり、最終的に廃止となった。

 設立者のエニー介護サービス代表取締役の瀬戸開策さん(83)は無念の表情だ。「どうしてもヘルパーさんを確保できませんでした」

 事業所は2001年、ゼロから立ち上げた。脳梗塞で倒れた妻の伸子さん(81)の介護経験から、年中無休の訪問介護事業所が必要と感じた。町で2カ所目だった。その後、町で最初の訪問介護事業所が撤退。町唯一の訪問介護事業所として、三保地域の要支援者にもヘルパーを派遣してきた。

 しかし、高齢化や親の介護などでヘルパーが退職していく中で、採用が追い付かなかった。現在はグループホームの運営に尽力している。

 同事業所の廃業は「町にとって本当に痛手だった」(町保険健康課)。町内では、新たに訪問介護事業所を立ち上げられないかという議論もあったという。しかし、可能な設立母体はなく、町外の訪問介護事業所に頼るしかなかった。

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 人手不足は近隣市町の訪問介護事業所でも同様だ。

 県西地区の介護人材の不足は、県高齢者福祉施設協議会などがまとめた15年度県特別養護老人ホーム経営実態調査報告書にも表れている。エリア別に職員の本給を調べたところ、南足柄市と足柄上・下郡の8町(箱根町以外)エリアは、横浜市エリアを上回り、県内最高水準だった。人が集まらないため、本給を上げざるを得ないからだという。

 人手の足りない訪問介護事業所としては、介護の必要性が高く、身体介護でヘルパーの専門性も発揮でき、介護報酬も高い要介護度者への派遣を優先させるのは当然の措置だ。また、コスト面からも、他市町、まして山間部の要支援者にヘルパーを派遣するのは、容易なことではない。

 今回、町の懇願を受け派遣に応じた県西部の訪問介護事業所の場合、三保地域の利用者宅までは車で片道約50分にもなる。ガソリン代もかかる。

 同町での要支援者への訪問型サービスの介護報酬基本額は、1回45分2660円。各種加算を付けたとしても、そのままでは採算は合わない。

 ヘルパー派遣に当たっては、山北町地域包括支援センター、利用者と調整を行い、事業所から三保地域へのルート周辺で、別の利用者がある日に合わせ、三保地域の要支援者2人を回ることにした。往復の行程で計4、5カ所の利用者宅を回ることで、「何とか赤字にはなっていない」(事業所管理者)という。辛うじて派遣が実現した形だ。

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 厚生労働省が5月にまとめた2025年度の介護人材必要数は全国で約245万人。現状推移シナリオによる供給見込みでは約34万人も不足する。県内分は約2万1千人の不足と推計されている。介護人材不足は今後さらに深刻化していく。

 こうした背景から介護保険制度の改革で導入されたのが、ボランティアら地域の多様な主体を活用するという「総合事業」だ。しかし、山北町の状況は、総合事業が多くの市町村にとって、すでに実現が難しい状況に陥っていることを示している。

 ◆介護人材の必要数 厚生労働省は5月、全国の市町村が策定した第7期介護保険計画に基づく介護人材必要数をまとめた。それによると、2020年度末に約216万人、25年度末には約245万人が必要数。16年度段階の約190万人に加え、20年度末までに約26万人、25年度末までに約55万人、毎年6万人以上増やしていく必要がある。現状推移シナリオによる供給見込みでは、20年度で約13万人(県内約1600人)、25年度で約34万人(県内約2万1千人)の不足が生じるとしている。

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