支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 サービスを守る(1)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 サービスを守る(1)

足りぬ人手 ヘルパー派遣が中断

西丹沢の山々に丹沢湖が抱かれる山北町三保地域。中川温泉などを抱えた観光地でもある

 山北町の丹沢湖以北の山間部である三保地域で今年4月、約9カ月ぶりに要支援者に対するヘルパー派遣が再開された。2017年6月末、町唯一の訪問介護事業所がヘルパー不足のために廃業した後、同地域の要支援者については、移動コストなどから、近隣市町の訪問介護事業所からヘルパー派遣を断られていた。今年2月、町保険健康課長らが異例の事業所回りをして懇願した結果、県西部の1事業所が派遣に応じてくれた。地域の現状からは、県内の多くの地域の厳しい未来も見えてくる。

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 三保地域に暮らす山内和子さん(83)=仮名=は腰などが悪く、「要支援2」の認定を受けている。家の中の移動にも苦労している。

 昨年7月からヘルパーが来なくなり、掃除など家事がストップしたことを気に病んで、体調も崩した。

 週1回だけだが、4月から新たな事業所からヘルパーが来て、再び家事などをしてくれるようになった。「これでやっと明日のことを心配せず安心して眠れる」と涙を流した。

 ヘルパー派遣に応じた事業所の管理者は「わざわざ課長さんが来て頼まれたので、何とか期待に応えようとしました」と話す。ヘルパーの女性も「そんなに喜んでもらえて、本当に良かった」と、感動した様子だ。

 介護保険では、状態に応じて7段階(要支援1、2、要介護1~5)の判定がある。自立に近い要支援者に対するサービスは、市町村が中心となって行う総合事業の対象となり、地域包括支援センターがケアマネジメントを行う。

 総合事業での訪問型のサービスには、訪問介護事業所による通常の訪問介護と、緩和された基準によるサービス(訪問型サービスA)、住民主体による支援(同B)、短期集中予防サービス(同C)、移動支援(同D)の計5種類がある。A~Dのサービスは、介護人材が不足する中で、掃除、洗濯、料理といった生活援助が中心になる要支援者へのサービスは、地域住民ら多様な担い手で対応しようという考えだ。

 ところが、山北町では現在、A~Dのサービスのめどは立っていない。

 同町唯一の訪問介護事業所の廃業後、最後までの利用者24人のうち、要介護者14人はそれぞれ契約のケアマネジャーが新たな訪問介護事業所の手配などを実施。要支援者10人と、その後の要支援者については、町地域包括支援センター(町社会福祉協議会運営)が対応した。

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 しかし、三保地域は町中心部からでさえ車で片道30分近くかかる。同地域とその周辺の要支援者だけは、ヘルパーを派遣してくれる事業所が見つからなかった。移動時間・コストや報酬額の低さ、人手不足からだ。

 認定の見直しをしてもらい、報酬額の高い「要介護」に変え、訪問介護を受けやすくするなどの対応も取った。それでも、要支援のままで、地域で暮らし続けるためには訪問介護がどうしても必要な人が、年初の段階で5人残った。

 そのため今年2月、「町として何とか手配しなくてはいけない。ただお願いするしかない」と、同町保険健康課の佐藤孝行課長=当時=と尾崎雄一主幹=同=が2人そろって、直々の事業所回りを始めた。過去にないことだった。

 幸運なことに、2カ所目の事業所が懇願に応じてくれた。4月までの調整で、最終的には三保地域の要支援者2人に対し、週1回のヘルパー派遣が再開されることになった。


 ◆山北町三保地域 横浜市、相模原市に次いで県内3番目の面積の山北町の人口は1万464人(5月1日現在)。丹沢湖から北側の山間部である三保地域(山北町中川、世附、玄倉、神尾田)には、点在する集落に計496人(同)が暮らす。同町の高齢化率は2017年1月1日現在で36.5%で、湯河原町、真鶴町、三浦市、箱根町に次いで県内5番目の高さ。

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