聴覚障害、要約筆記で支え 邦画に字幕、茅ケ崎で7月上映|カナロコ|神奈川新聞ニュース

聴覚障害、要約筆記で支え 邦画に字幕、茅ケ崎で7月上映

筆記通訳サークルの記念誌を手に「聴覚障害者の人に少しでも情報を届けたいという思いで続けてきた」と語る木下さん(左)と宇都木さん=茅ケ崎市

 聴覚障害者をサポートする茅ケ崎市の筆記通訳サークル「虹」が7月14日、字幕付きの映画「3泊4日、5時の鐘」の上映会をラスカ茅ケ崎ホール(同市元町)で開催する。サークル発足から30年。記念事業となる上映会を前に、メンバーは「聴覚障害者のコミュニケーション方法を知るきっかけになってもらえればうれしい」と語る。

 サークル「虹」は1988年に結成。以来30年間、メンバーは病院の診療、大学の講義、冠婚葬祭などさまざまな場面で聴覚障害者をサポートしてきた。

 聴覚障害者は手話を使うと思われがちだが、サークルが取り組んでいる要約筆記をコミュニケーションの手段として活用する人は少なくない。中途失聴者や難聴者ら、人生の半ばで聴覚が不自由になった人にとって手話の習得は容易ではないからだ。

 要約筆記の三原則は「早く、正しく、読みやすく」。一般的に人は1分間に約300字話すとされるが、要約筆記はパソコンで200字、手書きでは70字程度が限界だ。サークルで会長を務める木下尚美さん(52)は「的確に要点を書かないといけないのはもちろん、当事者にとって大切な情報を伝えないといけない」と話す。

 以前、大学の講義に立ち会った時のことだ。教授がジョークを言い終わるのと同時に書き留めた時、聴覚障害の学生が周囲の学生と一緒に笑った。

 「授業の内容に関係ない冗談は書く必要はないと、私たちは思いがちだけど、そうではない。学生は『みんなが笑っている時に自分だけが分からないのが一番つらい』と」

 みんなと同じタイミングで一緒に笑う学生の姿を見た時、要約筆記者に求められている役割を教わった気がしたという。

 今回の上映会は、20年前からサークルの一員として活動している宇都木由美子さん(63)の経験がきっかけになっている。

 昨年8月、市立図書館で開かれた「3泊4日、5時の鐘」の上映会。宇都木さんは映画好きの聴覚障害者と鑑賞していたが、邦画の作品には字幕がなかった。

 「少しでも映画の情報を届けられれば」。携帯電話のライトで照らしながら、手元のホワイトボードに物語の内容をつづったという。

 「とっさに要約筆記をしたけれど、物語の楽しさや雰囲気を伝えきれなかった」。宇都木さんは会場に来ていた映画監督とその場で交渉し、後日、正式に字幕を付けることに了承をもらった。

 字幕は当初、登場人物のセリフだけだったが、聴覚障害者のアドバイスを聞き、電話の音やドアが閉まる音なども書き込んだ。

 当日は映画の大型スクリーン横に字幕用のスクリーンも設置し、プロジェクターで映し出す。上映会後の監督のトークショーでも手話通訳と要約筆記がつく。

 木下さんは「中途失聴者や難聴者は話すことはできる。それ故に周囲からは理解されず、孤立してしまう人も少なくない。上映会が、社会の理解が進むきっかけになってくれれば」と話している。

 初回は満席。2回目は午後5時半~7時15分。無料。問い合わせは、木下さん電話・ファクス0467(88)6950。

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