絵本読み聞かせ「命絶たないで」 女性画家、全国で授業|カナロコ|神奈川新聞ニュース

絵本読み聞かせ「命絶たないで」 女性画家、全国で授業

子どもたちの声を聞きながら、授業を進める夢ら丘さん(手前中央)と吉沢さん(左後方) =真鶴町立まなづる小学校

 全国の小中学校などを巡り、絵本の読み聞かせを通じて命の大切さを伝えている画家がいる。東京都多摩市の夢(む)ら丘(おか)実果さん。16日には真鶴町の小学校を訪れ「命は取り換えられない。苦しい時こそ話したり、大人に相談したりすることを学んでほしい」と、子どもたちに語り掛けた。

 「自分の良いところを見つけたら、時々思い出してください。そして友達の良いところも教えてあげて。お互いが元気になれますよ」。町立まなづる小の体育館に、夢ら丘さんの柔和な声が響いた。

 この日、低学年107人と高学年108人向けにそれぞれ行われた道徳の授業に、先生として立ったのは夢ら丘さんと、絵本作家の吉沢誠さん。

 出前授業の読み聞かせの題材として使っている絵本「カーくんと森のなかまたち」(ワイズ・アウル刊)で共著し、夢ら丘さんが原案と絵を、吉沢さんが文を担当している。

 絵本は、ホシガラスの「カーくん」が主人公。カーくんは自分の容姿や鳴き声に自信がなく、「ぼくなんていなくてもいい」「消えてしまいたい」とまで思う。だが、仲間らに励まされて自分の良さに気付き、元気を取り戻す-。そんなストーリーで、命の尊さや、周囲の支えの大切さを描いている。

 保護者も見守る中、絵本の一場面一場面をプロジェクターで大きく映し出し、丁寧に説明していく授業は好評だった。

 相手を思いやることに、4年の女子児童は「クラスでもそうしたい」。周りからも実践したいとの声が次々と上がった。

 夢ら丘さんは、友人の女性を自殺で失った経験がある。自身も交通事故に遭い、画家としての仕事はもちろん、身の回りのことができない日が続き「私なんていない方がいい。死んでしまいたい」と苦しんだ。

 そんな時に支えてくれたのが家族や友人。当時小学生だった娘から「お母さんがいるだけでいい」と言われて心が救われた。友人は時間をかけて話に耳を傾けてくれた。

 リハビリと周囲の励ましなどで心と体の健康を取り戻し、「この経験を伝えたい」と自殺を防ぐ教育を広めようと決意したという。

 絵本は2007年9月の世界自殺予防デーに合わせて出版し、同時に出前授業をスタート。「カーくん」とともに全国各地の小中学校や保育園などを訪問し、出前授業は10年余りで600回を超えている。

 「絵本なら柔らかく伝えられる。失われていい命は一つもなく、命はかけがえのないことが伝われば」。心の健康を維持するためには低年齢からの教育が重要とも説く夢ら丘さん。これからも、子どもたちのもとへ足を運ぶ。

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