時代の正体〈613〉沖縄戦(下)過去直視、戦争総括を 精神科医・蟻塚亮二さん|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈613〉沖縄戦(下)過去直視、戦争総括を 精神科医・蟻塚亮二さん

【時代の正体取材班=田中 大樹】「島ぐるみトラウマ(心的外傷)」。福島県相馬市でメンタルクリニックの院長を務める精神科医の蟻塚亮二さん(71)は、沖縄社会をそう表現する。

 沖縄戦のトラウマが統合失調症やうつ病など精神疾患の増加を招き、ドメスティックバイオレンス(DV)やアルコール依存、自殺、離婚、引きこもり、児童虐待などの問題も引き起こした。そう関連づける。

 基地あるが故、米軍による事件事故が後を絶たず、米軍機が轟音(ごうおん)をまき散らす。「基地の存在が脳に刻まれた『寝た子』を起こす。人々は沖縄戦のトラウマを引きずり、癒えることはありません」

 蟻塚さんはまた、沖縄を「島ぐるみ難民状態」とも言い表す。

 古里を失うことが、心にどれほど影を落とすか。東京電力福島第1原発事故の避難民を診て、肌身で感じてきた。

 「例えば、畑を耕してきた農民が土地を失う。農民にとって土地は自身の精神的な属性です。帰る場所のない原発避難民は難民状態と言えます。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症リスクは非常に高い」。海外の研究では、難民のPTSD発症率は通常の8倍に上るという。

 古里を奪われる。それは沖縄でも同じことだ、と蟻塚さんは考える。

 「沖縄戦での米軍による艦砲射撃は、地形を変えるほどの激しさでした。古里の山や野原が消え、生活を営んでいた集落が壊滅した。毎朝、毎晩と見続けていた景色が崩れる。それは自身のアイデンティティーが崩れることと同じです。古里を失うことは自分の心を失うことなんです」

 戦後、住民は米軍の収容所に閉じ込められ、難民同様の生活を強いられた。米軍に「銃剣とブルドーザー」で奪われた土地は基地となり、今なお古里に足を踏み入れることがかなわない。70年以上もの間、難民状態が続いていることと何ら変わらない。

 蟻塚さんは辺野古に思いをはせる。政府が新基地建設を押し進め、豊かな海が失われようとしている。「農民の畑と同様、漁民にとって海は心の拠(よ)り所です。そして、1度埋めてしまえば決して戻ってはこない。未来がなくなってしまう。そんな感覚でしょう」

 住民は目の前に広がる海とともに生き、海に育まれた文化を親から子へと伝えてきた。「親たちが目を輝かせながら見てきた海がなくなってしまう。自分たちは一体何に希望を持てば良いのかと、子どもたちは思うことでしょう。世代を超えて影響する問題です」...

PR