田中一村 生涯懸けて描いた奄美|カナロコ|神奈川新聞ニュース

田中一村 生涯懸けて描いた奄美

岡田美術館で展示会

造形が印象的な「白花と赤翡翠」=岡田美術館

 奄美大島に暮らし、亜熱帯の動植物をモチーフにした作品で死後に注目された日本画家、田中一村(1908~77年)の名作を紹介する「田中一村の絵画」展が、箱根町の岡田美術館で開催中だ。同館が所蔵する7点を展示しており、8月からは個人蔵の「アダンの海辺」も並ぶ。

 一村は「私の絵かきとしての生涯の最後を飾る絵をかくため」、1958年単身で奄美に移住。つむぎ工場で染色工として働き、画材費などがたまれば絵を描く生活を繰り返した。

 2~3カ月をかけて1点を完成させるほど出来栄えにこだわり、納得のいくものしか残さなかったため、奄美時代の作品は約30点しか現存しない。

 「熱帯魚三種」もそうした作品で、知人への年賀状に「一年かゝってたった三枚出来ただけです」と伝えたうちの1枚。絵の具を複雑に塗り重ねて、3匹の魚を色鮮やかに描いている。絵の具の粒子が盛り上がっており、輝きや質感を間近に見ることができる。

 「白花(はっか)と赤翡翠(あかしょうびん)」は、ダチュラの白い花々とカワセミ科の鳥、赤翡翠のシャープな造形が印象的な作品。背後の暗がりやガジュマルの枝が垂れ下がった様子には、不気味な雰囲気もある。同館の近森愛花学芸員は「ダチュラには毒があり、不吉なイメージも。きれいというだけでなく、妖しさも漂う作品」と話した。

 同館の小林忠館長は江戸中期の画家、伊藤若冲との類似を指摘しており、同館が所蔵する若冲作品を並べて展示。鋭い観察眼や、写生に忠実でありながら、綿密な描き込みのためにかえって装飾的に見える画面などの共通点を比較できる。

 他に一村が学んだ中国絵画や文人画、2カ月余りで退学した東京美術学校(現東京芸大)の同級生だった東山魁夷の作品も並ぶ。

 中学校の美術の教科書の表紙に採用されたこともある代表作「アダンの海辺」は、8月24日から展示。


 「田中一村の絵画」展 9月24日まで。一般・大学生2800円、小学・中学・高校生1800円。問い合わせは同館電話0460(87)3931。

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