支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 老いる団地(下)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 老いる団地(下)

孤立の公助にも限界 「多様性の共助へ抜本策を」

生活援助員派遣事業で週2回行われているサロン=横浜市営ひかりが丘住宅

 2015年度に横浜市旭区のモデル事業としてスタートした市営ひかりが丘住宅への生活援助員派遣事業。ひかりが丘団地自治会長の黒田勝夫さん(78)は「電話相談もあれば、訪問してもらっての生活相談もある。市や区の書類についてもアドバイスしてくれる。とても助かったという住民からの連絡が自治会にも数多く来ています」と語る。

 「高齢者が多く、病気や障害のある人も多い。民生委員も確保できない中で、生活援助員派遣はとてもありがたい」と、その意義を強調した。自治会では今年、「団地を元気にする会」もつくり、高齢者活動の強化に取り組んでいくという。

 旭区全体の生活支援コーディネーターを務める旭区社会福祉協議会の梅木博志主事も「住民が孤立して支援機関に声が届かないことが一番怖い。生活援助員がいなかったら、どうなっていただろうかという事例がたくさんある」と話す。

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 こうした高い評価から、事業は16年度から、市事業の「高齢者用市営住宅等生活援助員派遣事業」に移行して、継続的に進められることになった。

 相談件数は15年度が301件、16年度は290件。週2回のサロンの参加者は、15年度は計759人、16年度は計1243人に上った。関係機関との連絡会や事例検討会、地域における意見交換会なども開催し、地域の支援に取り組んでいる。

 また、15年度の生活援助員の1人は、16年度に地域ケアプラザの地域活動交流コーディネーターに就任。住民の困りごとを理解した上で、住民団体の育成など地域づくりに取り組むなどして、ケアプラザの総合力を高めることに貢献している。今後の課題としては、ボランティア育成のほか、ごみをさらに出しやすくする仕組み、身元保証人がいない人への支援、金銭管理支援などが挙げられている。

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 貴重な成果を上げ、地域に不可欠な存在となった生活援助員派遣事業。ただ、短期中期はともかく、長期的展望を考えると、大きな課題も見えてくる。

 ひかりが丘住宅のように、高度経済成長期に郊外の丘陵地などを造成してつくった大規模団地や大規模住宅地では、一定の世代が集中し、地域の多様性も少ない。高齢化により地域の機能が失われてしまう問題を抱えている。

 各地で団地再生、地域再生の取り組みが行われているが、その行方は楽観できない。行政(公助)による人の投入にも限界がある。

 ひかりが丘住宅の将来について梅木主事は「多様性が確保されたコミュニティーの中で、高齢者も障害者も助け合って生きるのが本来の姿。抜本的な対策を考える必要があるのでは」と指摘する。大規模市営住宅の再編は不可避の課題だ。

 日本の人口は53年に1億人を切り、65年には8808万人に減少すると推計されている。高齢化もさらに進む。全国の山間部や過疎地ではすでに、集落の集約など「積極的な撤退」戦略も模索されている。市営ひかりが丘住宅の事例は、地域包括ケアシステムの構築が容易ではないこと、首都圏においても地域再編を急ぐ必要があることを浮き彫りにしている。

(この部おわり。随時掲載します)

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