港WORKER:船でつなぐ町と人 黄色に染まる港 「見送り」新名物に オール横浜で歓迎|カナロコ|神奈川新聞ニュース

港WORKER:船でつなぐ町と人 黄色に染まる港 「見送り」新名物に オール横浜で歓迎

大さん橋国際客船ターミナル館長  岩田秀夫さん

「客船を見送る感動を市民と分かち合いたい」とケミカルライトを掲げる岩田さん=横浜港大さん橋国際客船ターミナル

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 純白の豪華客船は船出の時を迎えた。低いエンジン音と水音を立てながらゆっくりと動きだし、そして、別れを惜しむ汽笛を3回鳴らした。

 4月28日。横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)の屋上デッキでは、5千人もの市民が乗客に向かって一斉に黄色のタオルを振っていた。

 「行ってらっしゃーい」。あちこちから声が上がる。航海の安全と再会への願いを黄色に込めて-。

 乗客も見送る人も、双方が観客席で双方が舞台。感動的な出港シーンに涙する人波の中で、必死に唇をかむ男がいた。

 大さん橋の館長、岩田秀夫さん。指定管理者共同事業体の代表団体である横浜港振興協会の常務理事で、2016年4月から現職を務めている。
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 客船見送りキャンペーンを始めたのは3月24日。この日だけで2万3千人が訪れ、うち数千人が「ノーティカ」(3万277トン)に向けて黄色いタオルを振った。

 「飛鳥2」(5万142トン)が世界一周クルーズに出港した翌25日には2万7千人が来館。「ダイヤモンド・プリンセス」(11万5875トン)が出港した4月28日には3万3千人が大さん橋に訪れた。

 夜に出港した客船には一斉にケミカルライトを灯(とも)し、ミナトは幻想的な雰囲気に包まれた。「横浜港振興協会の藤木幸夫会長が『大さん橋は横浜のシャンデリア』と例えた通りの美しさだった」と振り返る。

 全国に150もの港があるが「5千人もの人たちが見送りに来る街は横浜しかない」。実は、これまで市民は横浜港との交流がほとんどなかった。それだけに豪華客船の見送りは市民の話題になり、ハマの新たな名物になりつつある。

 「盛大に見送られて出港したら、なんて素晴らしい旅になることだろう」。岩田さんは、見送りに参加した人たちの中からクルーズに行こうという人が必ず出てくる、とみる。

 東日本随一のクルーズ港・横浜の後背地には5千万人が暮らしている。横浜港で船旅の需要がさらに高まると、クルーズ客船を今よりももっと多く誘致することができるはずだ。

 豪華客船で訪れる外国人乗客が増えれば、地元で観光や買い物を楽しむ人たちが伸びる。その先には、県内経済へのさらなる波及効果が期待できる。
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 飛躍への鍵として客船見送りキャンペーンを提案したのは、大さん橋の指定管理者共同事業体の小此木歌藏代表。「ミナト横浜の観光化こそが、将来の横浜の発展に大いにつながる」。そう語る小此木代表から岩田さんに矢継ぎ早に具体的な指示が飛ぶ。

 大さん橋の4月の来場者数は、単月では過去最高の約31万人に上った。客船の寄港数が多かった上に、全ての客船の出港時に見送りキャンペーンを催すことにしたことが奏功した。

 小此木代表は「大さん橋に最も客船が寄港するのは7、8月。これらの月は50万~60万人になるのでは」。本年度は目標を300万人に上方修正することを決め、20年度の達成目標を2年前倒しした。

 来館者数の実績をみると、「和のテイスト」で外国人乗客へのもてなしを始めた16年度は約226万人。17年度は、普段は立ち入れない岸壁を会場にした「横浜港大さん橋マルシェ」を催したことで約241万人に増やした。

 岩田さんは「客船見送りキャンペーンに頼るのでなく、客船がいない日でも市民に来てもらえる場所にしなければ300万人達成はそう容易ではない」と気持ちを引き締める。

 一方で、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて客船寄港数の増加に対応するとともに、テロ対策など安全安心にも万全を期さなければならない。

 大さん橋は今年、商店街や企業、地域団体と連携を強めてクルーズ客への「おもてなし」に力を入れていく。「合言葉はオール横浜。ハマっ子として心を一つに取り組みたい」

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