支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 福祉村の実践(6)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

支え合いの現場から 地域包括ケアの行方 福祉村の実践(6)

「負担ゼロ」を制度化  住民力、掃除はプロ並み

要支援者の家を訪問し、掃除を行う平塚市生きがい事業団の伊藤トキ子さん

 平塚市の介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)では、町内福祉村の活用と並び、「生きがい事業団」(シルバー人材センター)の活用も特徴だ。福祉村の生活支援の活用が、「訪問型サービスB」(住民主体による支援)なのに対し、生きがい事業団の家事援助の活用は、「訪問型サービスA」(緩和した基準によるサービス)として制度化された。

 対象者は、要支援1、2や基本チェックリスト該当者で、原則として独居の高齢者。地域包括支援センターのケアマネジメントで、週1回、室内の掃除、ごみ出し、洗濯、買い物や薬の受け取りなどを、生きがい事業団の会員に担ってもらう仕組みだ。

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 「2016年度は男女19人の利用がありました」と事業団の武井克敏事務局長代理。17年度も19人の利用でスタートした。また、同年度からは利用料も無料とし、全国的にも意欲的な取り組みになっている。

 「とても助かっています。無料というのも年金生活者にとって本当にありがたい」と語るのは、サービスAの利用を始めた山本涼子さん(75)=仮名=。夫の一郎さん(72)=仮名=と2人暮らしの涼子さんは腎臓が悪く、厳しい食事制限と服薬で、ぎりぎり人工透析にならずに済んでいる。

 一郎さんもがんを患い闘病生活が続いている。2人とも「要支援1」の認定を受けている。介護保険では、週1回、訪問介護(現行相当)で専門職の訪問介護員に室内の清掃などをしてもらっていた。

 2人のケアマネジメントを行っている「高齢者よろず相談センター」(地域包括支援センター)倉田会(同市東真土)の介護支援専門員、新飯田真理子さんは「2人とも体力が落ちていて寝込むこともあるので、掃除など家事援助が必要です」という。ただ、今のところ身体介護は必要ない。そこで、「制度を理解してもらった上で、1人分ずつ週2回のサービスAに切り替えました。夫婦で支え合っているので、ぜひとも今の状態を維持してほしい」と話す。

 涼子さんは当初、利用料が無料になると聞いて驚いた。「申し訳なくて、後ろめたい気持ちもあります。これ以上、病気が悪くならないように努力します」と話す。そして、さらに感謝しているのが、事業団から派遣されている伊藤トキ子さん(75)の掃除の技術だった。「驚くほどきれいにしてくれます。事業団の会員の方は皆さん、それぞれ得意分野があり、プロ並みです」と感嘆する。

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 その伊藤さんは、夫を早く亡くし、働きながら子ども3人を育てた苦労人だ。70歳まで工場で働き、その後、生きがい事業団に会員登録した。

 週に5回、事業団の仕事をし、そのうち2回が山本さん宅。「信頼され感謝されると本当にうれしい。人のために頑張りたい」と笑顔を見せる。仕事に行く前は、腹筋30回、縄跳び運動70回などをして健康を維持。老人ホームでボランティア活動もしている。「80歳を超えても頑張りたい」と力強く語った。

 新飯田さんは「今後のことを考えれば、限られた専門職は、身体介護が必要な人、認知症の人に専門的に関わってもらうことが必要」と指摘する。倉田会の吉田暢浩管理者も「高齢者の力を発揮していただいている生きがい事業団は介護予防にもつながります。サービスAに協力することで、元気な高齢者も応援していきたい」と語った。

 ◆平塚市生きがい事業団 2017年3月末現在で60歳以上の1681人が会員登録。家事援助から大工、農作業、各種講師まで、職種に応じた配分金を受け取り仕事をしている。訪問型サービスAの実施では、研修会を開き男女83人が登録した。通常の家事援助は、基本料金1時間1千円(他に事務費80円)で誰でも利用でき、働いた会員には1千円が支払われる。2016年度は、112会員が計1万2320日働いた。サービスAでは、介護保険財源から1時間1千円が会員に支払われる仕組み。シルバー人材センターを活用した訪問型サービスAは、小田原、秦野市が有料で実施している。

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