さよなら横浜の福島地酒バー 復興支援に力、25日で幕 |カナロコ|神奈川新聞ニュース

さよなら横浜の福島地酒バー 復興支援に力、25日で幕 

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  • 公開:2018/05/23 19:43 更新:2018/05/23 19:53
「ふくしまの地酒バー」の様子(Fukurumカード推進協議会提供)

「ふくしまの地酒バー」の様子(Fukurumカード推進協議会提供)

 2014年8月から月に2日だけ開店し、福島県産の日本酒や料理を楽しめる「ふくしまの地酒バー」が24、25の両日、横浜市中区の驛(うまや)カフェで最後の営業を行う。近隣で勤務するボランティアや地元企業が協力して運営。地域の人気店となったが、計91日での寄付金100万円の達成を機に惜しまれつつ、のれんを下ろす。

 バーは、東日本大震災の被災地から神奈川県内に避難している子どもを支援する団体「守りたい・子ども未来プロジェクト実行委員会」副代表の谷杉佐奈美さん(57)が発起人となって誕生した。

 もともと大の日本酒好きという谷杉さん。支援活動の一環で11年夏から福島県内に何度も足を運んだ際、現地の日本酒を口にして「関東では飲めないようなおいしさ」にすっかりほれ込んだ。

 当時は東京電力福島第1原発事故の影響で県産食品の風評被害が厳しい状況にあった。「せめて横浜で応援できれば」。そんな谷杉さんの熱い思いに共感した横浜ビール(同区)が夜間は通常閉店している驛カフェの店舗を無償で貸し出すことになり、毎月第4木曜・金曜の開店にこぎ着けた。

 普段は団体職員として働いている谷杉さんは、バーの開店日には早退して着物に着替え“おかみ”に変身。「福島地酒」と記されたのれんを掲げて切り盛りした。店では12種類ほどの地酒を月替わりで1杯500円で提供。これまで扱った銘柄は約70種類にのぼる。採算度外視の価格設定だったが、利益が出るたび少しずつ、同プロジェクトへの寄付金として貯蓄してきた。

 日本酒の仕入れなどに協力していた福島県酒造組合(福島市)によると、ボランティアによる復興支援のバーの継続は、全国でも他に例がない。阿部淳専務理事も「(バーが開店した)当時は、風評被害に対してどんなに安全をPRしても首都圏の消費者にはなかなか浸透しなかった。だからこそ、あの時期から福島の魅力や情報を発信し、お酒のファンをつくってくれたバーには感謝しかない」と話す。

 県産の肉や野菜などを使ったおつまみも好評で、満員状態になることも多かった。仕事帰りの会社員らの間で「おいしい酒が飲める」と口コミで広まり、団体の常連客ができた。中には、実際に福島の酒蔵を訪問したという人も。谷杉さんは「一定の役目は果たせたかなと思う。大変だったけれど、本当にやってよかった」と振り返る。

 開店は午後5時~9時。谷杉さんは3年10カ月の思いをしたためたランチョンマットで客を出迎え、感謝を伝える。「記憶の片隅だけでなく、日常の中でおいしいお酒を飲みながらこれからも福島を思ってもらえれば」と多くの来店を願っている。

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