〈時代の正体〉「不安を応援に変え」ヘイト集会不許可求め市民団体会見|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉「不安を応援に変え」ヘイト集会不許可求め市民団体会見

記者会見する(右から)裵さん、崔さん、三浦さん=16日、川崎市役所

【時代の正体取材班=石橋 学】川崎市のヘイト対策の阻止を公言する人種差別扇動者、瀬戸弘幸氏が6月3日に市教育文化会館で講演会を計画している問題で、市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は16日、記者会見し、主催者への会館貸し出しを不許可にするよう求めた。人権被害がすでに生じているとし、市に公的施設でのヘイトスピーチを未然防止するガイドラインの適正な運用を訴えた。

 「不安や恐怖をぎりぎりのところで応援の気持ちに変換している」。在日コリアン3世の崔江以子(チェ・カンイヂャ)さんは、そう声を振り絞った。

 講演会の計画を知って2週間余り、「絶望的な気持ちで過ごしている」。瀬戸氏は在日コリアンの殺害を呼び掛けるヘイトデモに繰り返し参加し、自らも差別者を集めてデモや講演会を開いてきた人物だからだ。

 市に問い合わせても「情報収集中」との答えが繰り返されるばかり。講演会を告知するブログには「朝鮮人は侵略者」「日本から出て行け」といった差別コメントが次々と書き込まれ「人権被害が拡大し、不安や絶望は増すばかり」。

 2度にわたり、わが街、川崎区桜本を襲ったヘイトデモの悪夢がよみがえる。路上に立ち抗議の声を上げ、野放しの差別が二度と繰り返されないよう、国や市にルールづくりを訴えた。

 桜本の被害が立法事実となって成立をみたヘイトスピーチ解消法に基づいて制定され、今春施行されたガイドラインはだから希望だ。

 「私たちが痛みを訴えなくても、行政が施策として私たちの人権を守ってくれる」

 市の対応への不満をのみ込み、崔さんは「これまで通り、ヘイトスピーチの根絶に向かい、市民と議会、行政が同じベクトルで歩むと信じ、市が指針を適正に運用するようエールを送りたい」と訴えた。

 三浦知人事務局長は「瀬戸氏は市のヘイト対策に反旗を翻し、インターネット上に配信された集会やデモの動画には『殺せ、死ね』という醜いヘイトスピーチが書き込まれている。ヘイトスピーチは沈静化しておらず、今回のケースはガイドラインが実効性のあるものかどうかの試金石」と指摘。市議会が全会一致で決議した「ヘイトスピーチの根絶に関する決議」を挙げ、「市民社会の後押しと議会の決議がある。これ以上差別を拡散させぬよう、毅然(きぜん)とした判断が市には求められている」と話した。

 志田晴美さんは、昨年12月に瀬戸氏らが同会館で開いた集会を例に「一見するとヘイトスピーチとは分かりづらいが、外国人を排斥しているのは明らか。同じ団体が集会を開けば、ヘイトスピーチが行われることになる」と強調した。市民の立場から「貸し出しの可否をきちんと精査し、第三者機関の意見を仰いでもらいたい」と求めた。

 社会福祉法人青丘社の理事長の裵重度(ぺ・ジュンド)さんは「いまこそ川崎の行政力、川崎が目指してきた人権行政が試されている。ヘイトスピーチという犯罪をみすみす認めるのか、行政の良心が試されている」と切り出した。

 1970年代から在日コリアン集住地区の川崎区桜本で差別のない共生のちづくりに取り組んできた。「外国人と共に生きる社会をつくるという歩みを川崎市とともに進められてきた。私たちは市に一定の尊敬を持ち、信頼もしている」

 だからこそ開いた記者会見だった。
 
 「ガイドラインも市長の思い中から作られてきたものだと思う。私たちも行政を支えるから、市に頑張ってほしいと意思表示をさせてもらった。安易に腰砕けになるとヘイトスピーチ団体はこれに前例に集会やデモを次々と計画してくることになりかねない。行政がどこまで性根を据えて一歩を踏み出すか。行政の良心でどう食い止めるか。市に頑張ってほしいという思いが強くある」

 会見に先立ち、メンバーは会館の管理権限を委譲されている川崎区役所を訪れ、水谷吉孝区長にガイドラインの適正運用を求める要請書を手渡した。

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