”初めの一歩”支えるために 川崎市が「短時間雇用」推進|カナロコ|神奈川新聞ニュース

”初めの一歩”支えるために 川崎市が「短時間雇用」推進

 改正障害者雇用促進法の施行に伴い、4月から働く人に占める障害者の割合(雇用率)が引き上げられ、新たに精神障害者も対象になった。ただ、精神障害のある人の中には障害特性ゆえに長時間勤務が困難で、雇用率の算定基準である「週20時間以上」が壁となることも少なくない。そこで“初めの一歩”を支えようと、川崎市が進めるのが「短時間雇用」という新しい働き方だ。

働くことに自信


 平瀬川両岸を挟むように町工場が立ち並ぶ同市高津区久地。板金・金属加工業「ヒラミヤ」(従業員9人)の2階事務室が男性(42)の勤め先だ。自分の意思に反して不安が繰り返し浮かび、不合理な行為を重ねてしまう強迫性障害があり、これまで一般就労が難しかった。市の紹介を受けて昨年10月から「短時間雇用」で働き始めた。

 膨大な数の金属製品の設計図をスキャニングしてPDF化し、番号をつけてパソコンに取り込む作業を任された。男性は「とにかく間違わずに、一つ一つの作業を早くできるよう心掛けている」と話す。

 週3日間、午前9時から正午まで働く。時給千円。勤務時間は週9時間と長くはないが、集中して作業をする必要があり、疲れるという。それでも「始業前に来て、決められた時間を最後まで働くことに達成感を感じる。自分も稼げることがうれしいです」と語る。

 以前は働いていないことに「後ろめたさを感じていた」。いまは仕事に慣れて「勤務時間、日数を増やしていきたい」と自信も出てきた。男性は一歩一歩、前に進もうとしていた。

雇用主に満足感


 「会社は助かっている。無遅刻無欠勤、真面目な仕事ぶりですから」。平宮健美社長は男性の働きぶりを高く評価する。

 優れた金属加工技術を持ち、発注先のオーダーに速やかに応える同社。新車の試作開発に伴う各種パーツから店舗内装の装飾品までさまざまな仕事が舞い込む。多品種少量生産のため設計図は膨大な数に上り、収納したファイルは事務室内にあふれていた。

 「顧客から再び発注があれば、引っ張り出すので保管しておく必要がある。整理したかったが、従業員も忙しく、手つかずだった」と平宮社長。そんな時期に「短時間雇用に回せる仕事はないですか」と、市障害者雇用・就労推進課から地元の工業会を通じて話があった。

 市や就労支援機関からは「男性は繰り返し質問する特性がある」と事前に説明を受けたが、「分からなければ何度でも聞いてくれる人が良い」との会社側の希望とは合致していた。

 平宮社長は「市は仕事も、男性もよく理解しているのでうまくマッチングしてくれた。困ったことは全くない」と説明。その上で「ここで働くことで『社会に出て働く』という彼の目標の実現につながればいい」と期待する。

開拓、橋渡し役に


 市は2017年度から東京大先端科学技術研究センターと協力し、「短時間雇用創出プロジェクト」をスタート。週20時間未満に抑えた就労先を開拓し、現在、協力する会社は23社に上る。作業内容は梱包(こんぽう)や検品、工場の清掃などさまざまだ。

 「やりたいけど着手できていない仕事、忙しい社員を残業させてまでできない仕事。でも、やれば必ず会社にプラスとなる仕事を切り出してもらっている」。橋渡し役となる市障害者雇用・就労推進課の平井恭順担当係長はこう説明する。

 採用までには、(1)市が企業に短時間雇用に任せられる仕事の提供を働き掛ける(2)仕事が決まれば、移行支援事業所や障害者地域就労援助センターを通じ、希望者を募る(3)希望者を集めて職場見学会を開き、就労支援員にも見てもらって続けられる作業かを判断してもらう-という各段階を経る。

 就労後は原則、仕事内容や勤務時間の変更は行わない。業務をしっかり定義した上で雇用することでトラブルも防げるという。

 「就労支援事業所あやめ」(同市高津区)の就労支援員・石井彩子さんは、ヒラミヤで働く男性について「職歴のなかった方だったので、無理のない時間でまず働き、職歴をつくることが社会参加の一歩になるとお勧めした」と振り返る。

「週20時間」の壁


 事業主に障害者の雇用を義務付ける法定雇用率は、...

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