〈時代の正体〉ヘイト対策遅れに警鐘 人種差別撤廃法訴えシンポ|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉ヘイト対策遅れに警鐘 人種差別撤廃法訴えシンポ

人種差別撤廃基本法の必要性を説く登壇者=東京都千代田区の在日本韓国YMCA

【時代の正体取材班=石橋 学】弁護士や研究者らでつくる人権団体「外国人人権法連絡会」は14日、都内でシンポジウムを開き、人種差別撤廃基本法の早期制定を訴えた。在日コリアンの「虐殺宣言」を行った極右政治団体「日本第一党」を引き合いに「国レベルでのヘイトスピーチ対策が遅れ、差別の状況は厳しさを増している」と警鐘を鳴らした。

 日本第一党党首で、在日コリアンの差別を扇動してきた桜井誠氏は3月31日に相模原市内で講演した際、「ヘイトスピーチ解消法と条例を作った人間を必ず木の上からぶら下げる。物理的にやるべきだ」などと発言。在日コリアンや差別撤廃運動に取り組む人々へ危害を加えると予告した。

 同会運営委員の師岡康子弁護士は「マイノリティーへの攻撃というだけでなく、社会全体の右傾化とファシズムに直結する。野放しは危険だ」と問題提起。政治活動を偽装するなど差別主義者の活動が悪化、巧妙化している現状に「理念法である解消法では限界がある。憲章で差別禁止をうたう五輪の開催までに人種差別撤廃基本法を実現させたい」と会の方針を示した。条例制定など自治体のヘイトスピーチ対策、差別撤廃施策を後押ししていくことも確認した。

 参加者を含めたディスカッションでは、共同代表の一人、田中宏・一橋大名誉教授が「下々の心無い人が差別をし、お上がとがめているかのように語られるが、果たしてそうか。高校無償化制度を作り、朝鮮学校を排除し、新しい差別をつくりだしているのは政府だ。お上が差別をしているからこそ深刻だ」と指摘した。

 同じく共同代表の丹羽雅雄弁護士は「世界人権宣言と人種差別撤廃条約が平等と差別の撤廃をうたっているのは、差別を含めた人権侵害を引き起こした二つの世界大戦の深い反省を出発点にしているからだ。植民地支配とそれに起因する在日コリアンの問題を封印した日本国憲法は反人種差別、平等の視点が弱い。ヘイトスピーチを禁止する法律すらできない歴史的、構造的原因には憲法の国民中心主義がある。これを突破する規範を作り出す主体は私たちだ」と呼び掛けた。

 また、講演に立った近藤敦・名城大教授は在日外国人の人権保障施策の遅れを諸外国との比較から指摘。なかでも差別禁止法制と民族的マイノリティーの教育保障は最低水準にあるとした。

 締めくくりでアピールを採択。「ヘイトデモ・街宣は各地で横行し、公人の差別発言も後を絶たない。朝鮮総連中央本部の銃撃という衝撃的なヘイトクライムが発生したが、政府は非難する意思を表明しなかった」と危機感を表明した上で、「マイノリティーの権利と尊厳が守られる社会の実現に向けて、日本政府と国会に対し、ヘイトスピーチ解消法の実効化と人種差別撤廃基本法を速やかに制定することを改めて強く求める」と訴えた。

 同会は日本が1995年に加入した人種差別撤廃条約の義務を履行する人種差別撤廃法と人権基本法、国内人権機関の実現を目指し、弁護士や研究者、NGOが中心になって2005年に結成。この日のシンポは年1回の総会の開催を記念して開かれた。

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