港WORKER:安全に楽しく共存|カナロコ|神奈川新聞ニュース

港WORKER:安全に楽しく共存

横浜SUP倶楽部代表・柿澤寛さん

水上バイクなどに注意を呼び掛ける横断幕を示す柿澤さん=大岡川

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 横浜・みなとみらい21(MM21)地区に注ぐ大岡川をはじめ、周辺の運河で見られるようになった「スタンドアップパドルボード(SUP)」。ボードに立った姿勢でパドルをこぐ水辺の新スポーツだ。横浜市中区の「川の駅大岡川桜桟橋」を拠点とする「横浜SUP倶楽部」の柿澤寛代表(53)は「運河は横浜の貴重な財産。誰もが安全に楽しめる美しい水辺にしていきたい」との思いから、地域とともに活動の幅を広げてきた。

 柿澤さんがSUPに関心を持ったのは7年前。インターネットの動画サイトで、海外のSUP愛好者が大都会を自在に水中散歩する姿を見て驚いた。湘南ではSUPを使った波乗りを楽しむサーファーが出始めていたが、穏やかな都市部の水面でも気軽に楽しめることを知って興奮した。

 かつてはウインドサーフィンが趣味で、MM21地区の高級ホテルにあった会員制スポーツクラブの治療院で院長を務めていた。その後独立を決め、当時は中区常盤町2丁目に「関内整骨院」を開業したばかり。新たな趣味に挑戦してみようと思っていた絶妙のタイミングで「自分もやってみたい」と衝動に駆られた。

 大岡川で初めてSUPを体験すると、はまった。「毎日遊びたい」。その思いが高じて2013年春に横浜SUP倶楽部を立ち上げると、出勤前に一こぎする「朝SUP」など、日常の暮らしの中でSUPを楽しむ仲間が集い出した。

 目指す姿は「大人による大人のためのクラブ活動」。SUPを「フィットネス・スポーツ」と位置付け、スクールやクルージング、レースなどのイベントを企画してきた。「自分たちが楽しければいい、ということはない。活動を継続するためには社会性が問われてくる」と柿澤さんは考える。

 大岡川など運河をコースに巡る「横濱SUPマラソン」を初年度に企画、運営した際は、町内会や地域団体、横浜港の業界団体などに理解と協力を求め、地域参加型の実行委員会形式でスタートにこぎ着けた。

 今月4日に開かれた3回目のマラソンには全国から選手約60人が出場する規模に発展。SUPの普及にとどまらず、地域活性化や吉田新田として開発された横浜の郷土史を紹介する機会として地元から喜ばれた。

 大岡川を毎日こいでいると、気になるのがごみの多さ。「護岸や川面のごみを見て見ぬふりはできない」。SUPを使い自主的にごみを回収している姿が反響を呼び、地域住民や自然活動団体などの仲間が次々と増え始めた。

 拠点である川の駅大岡川桜桟橋の周辺で清掃活動を毎月続けるほか、地元や行政機関の協力で2年に1度は川に沈んだ自転車を引き上げて回収する取り組みに発展した。

 横浜港につながる大岡川は、特に桜並木が色づく春にはさまざまな船が行き交う。1人乗りの小さなSUPは衝突や転落によって、人がプロペラに巻き込まれるリスクがあるとして、横浜では独自に、SUP愛好者に対して救命胴衣や視認性の高い衣服を身に着けることを求めた。

 桜桟橋などを管理運営する「一般社団法人大岡川川の駅運営委員会」の一員として、航行安全ルールの作成に携わった。東京湾から来る水上バイクが大岡川で危険な暴走行為を行わないように、海上保安庁や県警、県など行政機関との連携にも力を注いできた。

 「川を利用する全ての人たちが安全に楽しく共存したい」。若者からお年寄りまで幅広い年齢の仲間とともにパドルを握る柿澤さんの、切実な願いだ。

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