神奈川の名将に鍛えられ 帝京監督 前田三夫|カナロコ|神奈川新聞ニュース

神奈川の名将に鍛えられ 帝京監督 前田三夫

全国のライバル編 63/100

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/03/18 02:00 更新:2018/03/18 02:00
神奈川高校野球100回大会 「よく覚えていますよ。いいゲームでしたから」。帝京を3度全国優勝に導いた前田三夫(68)が、滔々(とうとう)と語り始めたのは1987年夏の名勝負。甲子園で“京浜決戦”と呼ばれた、横浜商(Y校)との3回戦だ。

 「Y校とは練習試合をする仲。走攻守そろって畳み掛ける。公立という印象は全くありませんでしたね」

 Y校先発は2試合連続完封と波に乗る2年生古沢直樹。帝京のエース芝草宇宙(元日本ハムなど)も前の試合でノーヒットノーランを記録。戦前の予想通り、両者譲らぬ投げ合いとなった。

 七回に1死一塁から送りバント、中前適時打で帝京が先制。そのまま逃げ切るか-。

 Y校は最終回。1死から滝沢貴弘が内野安打で出塁する。さあ同じように送るのか-。スタンドが固唾(かたず)をのんで見守っていたグラウンドで、まさかの出来事が起こった。

 芝草がマウンドから一塁手に近づくと、そのミットにボールを忍ばせた。

 「隠し球、やるか」

 「やろう」

 そんな2人のやりとりを知る由もないY校・滝沢は、一塁ベースを離れてタッチアウト。貴重な同点走者を一瞬で失い、百戦錬磨の監督・古屋文雄も「ベンチのミス」と天を仰いだプレーだった。

 この結末に、前田も驚くばかりだったという。「僕も最初分からなくて。練習でもしたことがなかったから」。ただ、芝草らの「ひらめき」をこう理解した。「Y校の強さは粘り。1点差はきついと彼も感じていたはずですよ。隠し球自体は悪いことではない」

 とはいえ、アウトにした後、得意げに頭を人さし指で指した一塁手には「バカヤローって怒りましたよ。頭使ったってポーズをして。高校生らしくない」。学校にも「何をやってるんだ」というクレームの電話があったという。
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