業務拡大、高まる能力 巡視船続く進化 女性も安心の設計|カナロコ|神奈川新聞ニュース

業務拡大、高まる能力 巡視船続く進化 女性も安心の設計

「荒天時でも航行性能が高い」と紹介する巡視船「ひたち」の岩田船長

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 海の秩序と安全を守る海上保安庁は今年、創設から70周年を迎える。その活動の象徴といえるのが巡視船だ。海洋秩序の維持や海難の救助だけでなく、海洋環境の保全、海上交通の安全確保など多岐にわたる業務を最前線で担う“純白の船”は、どのように作られるのだろうか。

 巡視船の計画から建造、維持管理を一手に引き受けているのが、同庁装備技術部船舶課と各管区船舶技術部の船舶工務官だ。専門的な知識や経験を併せ持つ技術のプロフェッショナルで、船舶工務官が作成した仕様書を基に造船所が建造を進めるという。

 現場に急行し、到着してから目的の業務を行うため、巡視船には高速性や優れた航続性が求められる。捜索救助などは移動しながら活動することもあり、業務中の船の安定性も不可欠だ。

 「例えばエンジンの大型化と船体の軽量化といったように、巡視船のデザインを決める要件は相反関係にあるのです」

 第3管区海上保安本部船舶技術部の重松吾郎管理課長は、設計には苦労が絶えず、その分、完成した際には喜びが大きいと明かす。

 船体が白色を基調としているのは、警察組織として法令執行をする上で目立つため。重松課長は「パトカーと同じ」と説明する。巡視船の設計思想は準軍事組織である米沿岸警備隊や、海上で迅速に行動し軍事力を行使する軍艦(自衛艦を含む)とも異なる。経済性を重視し、積み荷で船の形がほぼ決まる商船とも違い、海上保安業務の拡大や時代の要請によって年々デザインが進化してきた。

 1988年の日向灘不審船事件から不審船・工作船事件が相次いだことで、巡視船の高速化や防弾化、そして武器の高性能化が急ピッチで進む。大規模災害や周辺海域の情勢に応じて大型巡視船が遠隔地に派遣される場合、その担当海域の穴埋めを担える大きさと機能を兼ね備えた中型巡視船が計画され、「かとり」が2016年に就役。先月末には、かとり型の5番船「ひたち」、6番船「きたかみ」が同時に就役した。

 かとり型は遠距離や夜間の捜索監視ができる「遠隔監視採証装置」や、船同士が接触しても損傷を抑える「接舷(せつげん)用防舷物」、「高圧放水銃」などを装備。武器として「20ミリ多銃身機銃(機関砲)」を備える。

 ウオータージェット推進で高い航行能力とともに、重心を低く設定したことで居住性の良さを両立させた。ひたちの岩田大吉船長は「荒天下の航行でも揺れが少なく安定しているのが分かる。女性保安官に配慮した部屋も設計してあり、乗組員は快適に過ごせる」と喜ぶ。

 かとり型は総じて評価が高いというが、重松課長は「実は、最新型は細かな改修を施している」と明かす。さらなる高みを目指して、船舶工務官の仕事に終わりはない。

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