〈時代の正体〉大好きな学校に通えた 北綱島支援校で卒業祝う会|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉大好きな学校に通えた 北綱島支援校で卒業祝う会

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/03/06 02:00 更新:2018/03/07 15:54
 【時代の正体取材班=成田 洋樹】学校の存続を巡って曲折をたどった横浜市立北綱島特別支援学校(港北区)で5日、小学部から高等部までの卒業生18人の門出を祝う会が開かれた。卒業式を前に同校PTAが主催する恒例行事で、在校生や教職員、保護者らが参加し、思い出を分かち合った。

 卒業生は小学部4人、中学部10人、高等部4人。入学からの日々の様子を収めたスライドがスクリーンに映し出され、保護者らが思い出を次々と披露した。

 小学部6年の吉田桃さん(12)は重い心臓病を抱え、医療的ケアが欠かせない。就学前には一時的に心停止するなど命の瀬戸際を経験。入学後も入院や在宅療養でほとんど通えない時期があった。

 鶴見区から車で送迎している母の恵子さん(40)は、親子ともに体力的に楽ではない通学のことを考えると卒業を控えて感慨もひとしおだ。「娘は何事でもみんなと一緒に取り組むのが大好き。通い続けることができたことこそ一番の思い出」と振り返り、「中学部の修学旅行はディズニーシー。まだ行ったことがないので楽しみ」と新生活への期待を膨らませていた。

 中学部3年の福田麗香さん(15)には重度の重複障害があり、たんの吸引や胃ろうなどの医療的ケアが必要だ。日々のケアを担う母の美智代さん(51)は緑内障のため両目の視野の一部が欠けている。心配した両親が九州から自宅近くに転居し、日々の車での登下校を支えてくれている。

 麗香さんは大きな音が苦手だ。クラスメートがテーブルをたたいたりすることがあり、その物音が嫌いだった。だが、集団生活を送る中で次第に受け入れるようになったという。美智代さんは「成長の証し」と目を見張る。

 学校での生活も残りあと3年間。「障害者と支援者だけが隔離されて集まるような通所施設ではなく、地域のさまざま人が集う場で日中を過ごさせることができないか」。高等部卒業後は、そんな暮らし方を思い描いている。

 「小学部に入学したばかりのころの娘は登校後に、げた箱の前で泣いてばかりいた」。あいさつに立った穴瀬純子さん(56)は感極まり、言葉を詰まらせた。長女で高等部3年の育海さん(18)には重度の重複障害がある。人見知りで、子どもたちの輪の中になかなか入れなかった。

 高等部を終えるいまでは、菜園での授業で種のまき方の手本をクラスメートに示すなどすっかり溶け込んでいるという。4月からの新生活では、軽作業などを行う都筑区内の障害者施設に通う。将来的にはグループホームでの自立生活も視野に入れている。

 「娘はこの学校が大好きなので、卒業式が終わっても『学校に行く』と言うかも」とほほえみ、「北綱島で培ったことを社会に出てから生かすことができれば」と前を向いた。

 同校は市立肢体不自由特別支援学校再編の一環として2019年度から分校に移行される。保護者の理解が得られないまま市教育委員会が方針を決めた経緯があり、穴瀬さんは「今のままの学校に戻せるように、卒業後も何らかの形で保護者の取り組みに協力したい」と話した。


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