ふがいなさに涙 横浜高校 筒香嘉智(上)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

ふがいなさに涙 横浜高校 筒香嘉智(上)

現役ヒーロー編 31/100

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/02/01 02:00 更新:2018/02/01 11:37
神奈川高校野球100回大会 かつて、ハマが誇る希代のスラッガーが、こみ上げる感情に大きな体を支配されたかのように敗れ去った試合があった。2009年7月26日。神奈川大会準々決勝。筒香嘉智(26)にとって、高校最後となった試合だ。

 名門横浜と初の甲子園を目指す横浜隼人がぶつかり合った乱打戦。横浜が4点を追っていた八回2死一、二塁の好機で、3番筒香に打席が回った。

 初球-。高校通算69本塁打の強打者は意表を突かれた。隼人の捕手が立ち上がって外に大きく外したのだ。次の球も、その次も…。「敬遠なんて全く頭になかった。あれってなった。普通に考えたら、勝負しないわけがない」。今でも納得していない、と言わんばかりに振り返った。

 敬遠-。外野は右中間寄りの「筒香シフト」を敷いた上で、勝負を避けられた。投手、隼人ベンチをにらみつけ、何かを叫んだ。「相手が何かぐちぐち言ってきて、こっちは言い返して…」。冷静さは失われた。

 驚異の粘りで4点差を追い付いた九回1死二、三塁。一塁は空き、初球は捕手が外のボールゾーンに構えた。「また歩かされる」-。

 しかし、またしても裏をかかれた。隼人の今岡一平(現東芝)が投じたのは外角低めのチェンジアップ。思わず出たバットは空を切る。

 当時監督の渡辺元智の脳裏に、もがく大砲の姿が焼き付いていた。「珍しく打席でイライラしていた。あれでむきになって振っていた」。最後は内角のボール気味の直球を強引に引っ掛け、一ゴロ。延長十回の守備では自らの失策で出塁を許した走者が、サヨナラのホームを踏んだ。

 「みんなに申し訳ない…」。流した涙は甲子園に届かなかった悔しさではなく、自分へのふがいなさからだった。

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