10年積み重ねた「挑戦」 日々工夫して今も成長|カナロコ|神奈川新聞ニュース

10年積み重ねた「挑戦」 日々工夫して今も成長

徳永二男さん

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【KーPerson】徳永二男


 小学4年生まで過ごした横須賀で、2月に演奏会を行う=写真はチラシ。「言葉にするとうまく言えないけれど、うれしい」と、故郷には特別な思いを抱く。

 「徳永二男の挑戦」と名付けた10年10回のリサイタルシリーズを、東京の紀尾井ホールで2008年から続けてきた。昨年10月に最終回を迎え、今回はそのときと同じプログラム。中でも、ベートーベンのバイオリンソナタ第9番「クロイツェル」は初回にも弾いた大事な曲だ。

 「成長できていればいいな、と思ってやってきたが、10年たってどう変わっているか。10回聴いてくれた方が多くいらっしゃって、一緒に10年を積み重ねてきた感じがする」と振り返る。

 楽壇生活は50年を超え、昨年11月に71歳となった。同世代には演奏家として引退する人もいるが、現役続行中だ。身体機能は落ちていくが、年齢を重ねていくうちにさまざまな体験を積み、自分の中の表現は豊かになったという。

 「自分の体は道具。もっとこういう音を出したい、そのためには道具をどう使っていくのかを考える。車でいうなら、マイナーチェンジしている感じ。維持ではなくて、日々工夫しながら、少しずつ成長させている」と明かす。

 ここ5、6年は、毎朝1時間ほどの散歩を欠かさない。毎日楽器を弾き、海外に出掛ける際は、電子バイオリンを分解してトランクに忍ばせる。

 「若いときはすぐ回復するが、1日弾かないと他人の手のようになる。楽器を弾くための筋肉は常に使っていないとだめ。いわゆる筋トレではなく、音を支えるための筋肉を鍛えている」

 そんなベテランだが、毎回課題を持ってステージに立つという。「チゴイネルワイゼンは何回弾いたのか覚えていないくらい。でも、同じことをやっているわけではない。小さなことでも課題を課して、手応えがあるとうれしい」

 「われわれはステージで自分が楽しんではだめで、聴いている方が喜びを感じるかどうかが大切。ただ上手に弾きたいのでもなく、音を通じて観客とコミュニケーションをとりたい」

 自分が表現したいことが、聴き手に届いているかどうかに耳を澄ます。

とくなが・つぎお バイオリニスト。1946年横須賀市生まれ。バイオリニストの父・茂と鷲見三郎、桐朋学園で齋藤秀雄に師事。66年日本楽壇史上最年少のコンサートマスターとして東京交響楽団に入団。68年文化庁在外派遣研修生としてベルリンへ留学、ミシェル・シュバルベに師事。76年NHK交響楽団のコンサートマスターに就任。94年同楽団を退団しソロ、室内楽に専念。近年は指揮も行う。桐朋学園大特任教授。
2月18日午後2時から、横須賀芸術劇場(横須賀市)でピアニストの伊藤恵と演奏会を行う。曲目はベートーベンのバイオリンソナタ第8番と第9番、ブラームスのバイオリンソナタ「雨の歌」。S席5千円など。問い合わせは同劇場電話046(823)9999。


記者の一言
 「大人になってからチェロを始めました」と話すと「それは素晴らしいね」と励ましてくれた徳永さん。この貴重な機会に、どうしたら緊張しないかを尋ねたところ「私も今でも緊張するよ。(アイザック・)スターンも緊張しない方法なんてないって言ってたよ」と意外な答え。緊張をエネルギーに変えることが重要で、そのためには積み重ねをしっかり行い、自分に自信をつけることだとアドバイスしてくれた。やはり練習あるのみ。休日ですら弾かないときがある記者の手は、赤の他人の手だな、と反省した。さて横須賀芸術劇場のステージでは、写真で抱えているストラディバリウスで演奏するという。「こういうふうに弾きたいという求めに全て応じてくれる」。うらやましいが猫に小判になりかねない。さあ、練習、練習!

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