時代の正体〈566〉分断超える対話今こそ 国谷裕子さん×高橋源一郎さん|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈566〉分断超える対話今こそ 国谷裕子さん×高橋源一郎さん

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/01/08 12:00 更新:2018/06/16 10:42
時代の正体取材班=吉田 太一】明治学院大(横浜市戸塚区)で昨年末に開かれた「憲法が変わる(かもしれない)社会」と銘打った全5回の公開セミナー。最終回のゲストはNHKクローズアップ現代(クロ現)でキャスターを務めた国谷裕子さん。ホスト役の同大教授で作家の高橋源一郎さんとともに聴衆に訴えた。「分断されている時代の今こそ、対話が必要」

事実より共感


 高橋さん われわれはメディアを通して、社会、政治、憲法がどう変わるかを知る。そのメディア自体が時代とともに変わっているかもしれない。われわれに正確な情報が届いているのか、そもそも分からない。

 国谷さん クロ現では、課題に対して解決策を提示した。いいものだろうと思った解決策の紹介から数年経て、実はその解決策からまた新たな問題が発生してきた。一体自分は何を伝えてきたのだろうかと、思い悩むことがたびたびあった。

 例えば自治体財政が悪化する中、税金の無駄遣いをやめるためにサービスの外部委託化が進んでいる実態を取り上げた。結果、競争入札となり、(自治体直営時代と比べて民営化された部門の)雇用者の賃金はぐっと下がる。生活が厳しくなり、地域全体の活力が低下する。そんなことを目の当たりにした。

 社会、経済、環境の面で総合的な解決策はないだろうかと考えていた中で、国連で採択された(貧困撲滅や温暖化対策など17分野で30年までに達成を目指す)持続可能な開発目標、SDGs(エスディージーズ)に出合った。今はその取材を続けている。

 高橋さん SDGsで重要だと思ったことは、一般市民と専門家の共同作業。それがとても大事。この公開セミナーでも、憲法学者を招いた。われわれにとって大切で身近であるべき憲法を専門家に聞いた。連帯して取り組む共同作業だ。扱う分野は違うがSDGsも本質的には同じ。

 国谷さん まさにそう。SDGsの17の目標を実現しようとすると、利害対立も出てくる。環境、経済、社会を総合的に解決していくには社会的な対話が求められる時代が来たのだと思う。

 高橋さん 異なった価値観を持っている人たちが一緒に生きていくにはどうしたらいいのかということを考えてつくったのが憲法。今の社会に一番必要な考え方、モラルではないか。憲法とSDGsはよく似ている。深いところでつながっているのではないか。

 国谷さん 人々が事実よりも自分たちが感情的に共感できることを信じる傾向が強まっている。

 トランプ米大統領の当選や英国のEU離脱、フェイクニュースの広がりなども、人々が物事を判断する上で俯瞰(ふかん)した情報を見ずに自分たちが共感できる情報へのアクセスを強めた側面も大きい。

 分断が深まり、修復できずに、建設的な議論が行われにくくなっている。憲法改正が議論になったとき、このままでは大変なことになるのではないか。

番組の公平性


 高橋さん 本当にそうだ。国谷さんはメディアの最前線にいて、テレビのニュースなどに人々が関心を持たなくなったり、不信感を持ったりする実感はあったのか。

 国谷さん 逆に、世論を二分するようなテーマ、例えば、安全保障法制や特定秘密保護法案に対して、視聴者からは番組でもっと深く扱うべきだとの声も届いていたように思う。

 高橋さん 国谷さんは本でこう書いている。「公共性、公平性を一つの報道番組ではなく、NHK全体でバランスを取っている」。そのバランスがクロ現の晩年には崩れてきたということか。

 国谷さん 長い間、(一つの番組の中で)公平・公正をそれほど気を使わずに番組のキャスターを担当してきた。

 しかし、番組が終わる数年前から、...

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