子ども食堂 皆が寄り添う「大家族」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

子ども食堂 皆が寄り添う「大家族」

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/01/04 11:02 更新:2018/07/10 14:11
 「ジャジャーン!」

 クリスマスを目前に控えた2017年12月22日夕方。デイサービスと訪問介護事業を展開するNPO法人「ふぁみりーさぽーと泉」(横浜市栄区)の施設1階では、月に1度の「こども食堂にこにこ」が開かれていた。

 発起人の鯉沼聡美さん(32)が、チョコレートやブルーベリージャムなどで彩られたクラッカーを手に現れると、「わぁー」。集まった親子の歓声が上がった。

 「にこにこ」は、赤ちゃんからお年寄りまで地域の誰もが参加できる形で、昨夏に始まった。費用は子ども無料、大人300円。大人の参加費を食材購入費に充てるほか、個人や企業、フードバンクなどからの寄付で提供している。調理を担うのは、地元のボランティアたちだ。

 この日のメニューはとんかつ、大根とこんにゃくのピリ辛煮、マカロニとハムのサラダなど。計70人超が訪れた。「孫がいないので日頃、小さい子どもたちと接点がない。ここは、にぎやかで楽しいわ」。70代女性は目を細めた。鯉沼さんが目指す「大家族」のような光景が、ここにはある。

 普段は、ふぁみりーさぽーと泉で働く鯉沼さん。日々の仕事の中で、赤ちゃんも高齢者も、サポートするには20~65歳くらいまでの「中間層」の力が不可欠だと実感している。

 誰もが気軽に立ち寄れ、同時に中間層が元気に輝きながら働ける場が地域に必要、との思いが「にこにこ」の原点だ。年齢や生活環境の異なる人々をつなぎ、共生する地域づくりへの挑戦でもある。

 「子ども食堂は貧困、孤食など負のイメージで捉えられがちだが、私はそうした考えが好きではない。地域の人たちが心豊かに寄り添える場をつくりたい」

地域の大人が子どもを愛そう



 今の活動に至った背景の一つに、小学校時代の体験がある。低学年の頃、下町の雰囲気の漂う南区から栄区へ転居。新しい環境になじめず、苦しんだ。

 「テストは100点を取って当たり前の雰囲気。80点では褒めてもらえない。同級生もブランド物の洋服を着ていたり、子どもながらに『地域格差』を実感した」。いじめに遭うこともあり、学校を休む日が増えた。

 転機は小5の頃。近所の日曜教会学校へ通うようになり、そこで出会ったのが、現在NPO法人ふぁみりーさぽーと泉の代表理事を務める福田理佳さん(59)だった。

 当時、日曜教会学校の先生だった福田さんと鯉沼さんは文通をしたり、交換日記をしたり。実の親に言えないことを、「もう一人のお母さん」に打ち明けたこともあった。鯉沼さんは、福田さんから言われたことを今も忘れない。

 「しんどいかもしれないけれど、乗り越えられる子のところにしか、つらい経験はやってこないんだよ」。その言葉に支えられ、徐々に学校にも行けるようになった。

 大人になった今、鯉沼さんは確信している。自分は、地域の大人に愛されて育ったんだ、と。そして今度は、自分が恩返しする番だとも感じている。

 実は、さらなる夢も描いている。1階は子ども食堂、2階が高齢者、3階が障害者の住居空間となる建物をつくり、運営することだ。里親申請をして、親元で暮らせない子どもたちを、育児が一段落した地域の人たちと一緒に育てたいとも考えている。NPO法人の設立に向け準備中だ。

 「血のつながりに関係なく、みんなが一つになれる地域をつくれたら」。夢の実現に向け、走り続ける覚悟だ。

人口減で問われる
多様な主体の実践


 少子高齢化を背景に家族の形が変わり、地域社会が縮み始めている。戦後、右肩上がりで増加を続け、900万人を超えた神奈川県の人口は、2018年中にもピークを迎え、減少に転じる見通しだ。地域をいかにつないでいくか。公共をどう維持するのか。新たな局面に向き合う知恵と実践が問われている。

 県がまとめた人口推計によると、県の人口は50年には約800万人に減る見込み。1990年とほぼ同じ水準だが、人口構成が大幅に転換し、高齢化率は90年の8・9%から36・4%に上昇する。

 財政難にあえぐ自治体は本格的な人口減時代の到来で、施設の再配置や維持管理などの問題に直面。その中で住民サービスや事業をいかに維持するか、難しいかじ取りを迫られている。

 一方で、足元の課題解決に住民やNPOが積極的に取り組む動きも広がる。福祉や教育、環境、防災など幅広いテーマに多様な主体が交わる地域の力に目を凝らしていく。

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