握る絵筆貫く情熱 脳性まひの女性が全国入賞 横浜|カナロコ|神奈川新聞ニュース

握る絵筆貫く情熱 脳性まひの女性が全国入賞 横浜

「描きたいから描く」36年続け

吉田さんの作品が掲載された「『はたらく仲間のうた』スケジュール帳」のページ(きょうされん発行)

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 天井近くの窓から午後の日が差し込む、グループホームのリビング。吉田美樹さん(55)=横浜市旭区=は車いすから手を伸ばし、スケッチブックの人物画に黄色いアクリル絵の具を伸ばした。絵を描き始めて36年。ことしは全国コンテスト入賞という成果を残し、来年3月には初の個展開催を控える。

 かつてバリアフリーや福祉制度が乏しく、多くの障害者が自宅に閉じこもって過ごしていた時代を生き抜いてきた。だからこそ「自分がやりたいことをやるために突き進む」との信念を貫き続ける。

 吉田さんは1962年、同区で生まれた。重度の脳性まひがあり、手足が不自由で言葉を発することもできない。養護学校(現・特別支援学校)が79年に義務化されるまでは教育を受けない障害児もおり、通える小中学校が近くになく、都内まで母親の送迎で通学していた。

 障害者が社会に出るという考え方が、全くといっていいほど浸透していなかった時代。絵が好きな母親から勧められて絵画を習うことにしたのも、当時は「挑戦」だった。建物の2階にあった教室へは、母親に背負われて通った。

 グループホームで暮らす現在は、同居する仲間たちと共に作品制作に励んでいる。介助を受けながら絵筆や絵の具の色を選び、ゆっくり色を重ねる。花や風景、動物などモチーフは多岐にわたる。「力強さと色使いがこだわり」という。

 吉田さんは饒舌(じょうぜつ)だ。口で話すことができないが、手を上に掲げたり横に振ったりして「はい」「いいえ」を示すことで周囲とコミュニケーションを図る。

 グループホーム職員の菅原満利子さん(50)は「新米職員の時から(吉田さんに)育てられた」と話す。吉田さんが平日通所する系列施設の「空とぶくじら社」(同区)などで、利用者の作業の補助手順から言葉遣いに至るまで、時に厳しく助言を受けてきた。「美樹さんは、利用者であると同時に師匠。美樹さんがいなかったら今の私はなかった」


 吉田さんの「あじさい」は、紫色や赤色、青色などのアクリル絵の具を水気が少ない状態で塗り重ねた作品だ。全国の福祉作業所が加盟する組織「きょうされん」のコンテストで、2018年版スケジュール帳のイラストに選ばれた。その成果もあり、3月には同区の「ギャラリーふらり」で初の個展を開くことが決まった。

 吉田さんは「特に『障害があって頑張っている』とか『絵を描くことで社会とつながるんだ』とかではなくて、ただ描きたいから描いているだけ」と話しつつも、快挙に顔をほころばせ「これからも前進あるのみ」と決意を新たにした。

 作品が使用されている「『はたらく仲間のうた』スケジュール帳」は1300円(税込み)で、きょうされんのウェブサイトなどで購入できる。個展は3月7~10日。いずれも問い合わせは、空とぶくじら社電話045(382)1002。

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