〈時代の正体〉さらばツイッター ある在日コリアンの決別宣言|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉さらばツイッター ある在日コリアンの決別宣言

記者の視点=デジタル編集委員・石橋 学

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/12/01 05:47 更新:2017/12/09 03:19

抗議でも非難でもなく


 笹本氏は抗議集会の模様をインターネット中継で見ていたという。その目には何が映っていたのだろう。

 主催者の求めでマイクを握った崔さんは言っていた。

 「私にとってのツイッターは、花芽が出たらうれしくて、つぼみが膨らんだらうれしくて、花が咲いたらうれしくて、大切な人たちに知らせたくて、夜空に月が見えたらうれしくて、それをツイートする。その心豊かな、大切なコミュニケーションツールでした。それがいまは、『死ね』『出て行け』『殺せ』『ゴキブリ』『いなくなれ』…。毎日、ツイッターの通知が来ると怖いです。つらいです。苦しいです。ツイッター社の皆さん、どうか助けてください」

 ツイッターで、名前から顔写真、職場、生活圏、そして長男までがさらされ、見知らぬ誰かからいつ襲われるかという恐怖がつきまとって離れない。地元の川崎警察署に自宅周辺の巡回パトロールを依頼し、表札を外し、子どもとは近所を一緒に出歩かない。玄関のドアノブに手を掛けるたび、扉の向こうにレイシスト(人種差別主義者)が立っているのではないかと身構える。電車で隣に座った人がスマホをいじっていれば「私のことをツイートしているのは、この人かもしれない」と考えずにはいられない。

 殺される夢を見てから、うまく眠れない。何を食べても味を感じなくなった。

 長男はヘイトツイートが削除されたか、新たな投稿がなされていないかをスマホで確かめるのが朝の日課となり、ため息をつきながら学校へ行く。街中では他人のふりをするのよと言って聞かせていた小学生の次男は思わず手を振ったことをごめんなさいと謝り、「ヘイトスピーチってどこまでもついてくるんだね」とこぼした。

 抗議でも非難でもなく、懇願はこう続いた。

 「今日、ここで笹本社長やツイッター社の皆さんにマイクを持って言葉を届けたことがまたツイッター上に書き込まれたら、きっともう今夜からずっと『出ていけ』『死んでしまえ』という書き込みがされることでしょう。でも、私は怖くないです。私はツイッター社のみなさんの良心を信じています。自社の運営ルールにのっとって、きちんとヘイトスピーチを削除してくれる。そう信じて、だからこのようにマイクを持ってみなさんに思いを届けています」

 抗議集会を受けて、笹本氏は神奈川新聞社にコメントしていた。

 〈ヘイトスピーチに関しては日本法人を含めたツイッターの社員一同、皆さま同様に心を痛めており、ツイッター上のツイートを放置するつもりはございません。数の公表はできませんが、すでに毎日大量のツイートに対処しています。100%ご満足いただく結果をもたらすことはなかなか困難ではありますが、一同、最大限の努力のもとで改良していこうとしています。ご批判は真摯に受け止め、今後も努力は当然ながら惜しみません〉

 一体、いつまで待てばいいのか。「出ていけ」「死ね」のツイートは実際の行動となって現れ始めている。「朝鮮人は朝鮮へ帰れ」と怒鳴り散らす電話が職場にかかってきた。ゴキブリの死骸が入った封書が送りつけられてきた。頭部と胴体がばらばらにちぎられていた。ツイッター上で繰り返し呼び掛けられてきた「ゴキブリ朝鮮人」「殺せ」は、卑劣な送り主の手で実行に移されていた。

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