神奈川新聞と戦争(63)1933年 国民の統制を目指す|カナロコ|神奈川新聞ニュース

神奈川新聞と戦争(63)1933年 国民の統制を目指す

「最後の一大決戦の日」と見出しを掲げた1933年8月11日の横浜貿易新報1面

 1933年8月9日に始まった関東防空大演習の最終日、同11日の横浜貿易新報(横貿、本紙の前身)は1面トップに「最後の一大決戦の日」「一死君国に報ぜよ」と見出しを掲げ、国家に殉ずることを強いた。2面では「統制の訓練」と題した社説が、演習の意義を次のように説いた。

 「防空演習は、決して、徒(いたず)らに、敵愾心(てきがいしん)を養ふを目的とするものでない(略)大国民は、如何(いか)なる場合においても、沈着であらねばならぬ。高大なる精神を備へて居なくてはならぬ」

 いわく、日本は全世界を指導すべき立場にある。かいらい国家「満州国」を中国東北部に設立し、国際連盟を脱退したばかりの状況にあって、社説は日本の「正義」を主張した。そして、演習の目的を「統制の訓練に在る」とした。

 「一般国民に、統制ある訓練を施さんとするが、防空演習の要旨である」「規律を正しく、節制を保つは勿論(もちろん)、万事において、よく大国民としての態度を保ち、立憲国民としての秩序ある行動を保つを肝要とする」「日本は、統制ある国民として、世界に異彩を放つて居る」。統制は「日本精神」の優越性を表す-。生命を左右する現実の戦争と、精神性を同列に重ねた論説が、実に危うい。

 後段も「日本の日本たる美風は実に国家的統制の徹底といふ事において大いに其(そ)の美を発揮」「国家のためといふ一事に及んでは、日本国民は、必ず、如何なる場合においても、直(ただち)に、一致し協同し、一体となつて国家のために奮闘する」と美辞麗句の数々。

 満州事変以後、国際的に孤立しながら、同社説は「切迫せる危機に臨んでは居らぬ」と世論をなだめ、演習と同じく、国際社会に対して「世界の大国民」として臨むべきだと繰り返した。それは、予測された日中、日米戦争への危機感の裏返しだったろう。

 演習の目的も国際情勢も見誤った(あえてずらした)社説を横貿が載せた同じ日、他県の新聞には、将来の破綻を看破し、厳しく批判した論説が載った。長野県の信濃毎日新聞主筆、桐生悠々による「関東防空大演習を嗤(わら)ふ」である。

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