閉店危機、何度も乗り越え45年目 横浜の「こどもの本のみせ ともだち」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

閉店危機、何度も乗り越え45年目 横浜の「こどもの本のみせ ともだち」

手遊びを楽しむスタッフ(右)と集う親子たち=横浜市港北区

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 絵本と児童書の専門店「こどもの本のみせ ともだち」(横浜市港北区)が45年目を迎えた。閉店の危機を何度も乗り越え看板を守り続けるのは、地域のママらボランティア。支えるのは「本と人がつながる場、足を運んでくれた人がほっとできる場を守りたい」との思いだ。1冊との出会いから縁が広がり、店内は今日も本を愛する人たちの笑顔であふれている。

 「くまちゃんね、今日公園でどんぐり拾ったの!」

 秋を伝えるどんぐりを抱え、かわいらしいクマの手人形が登場すると、ママの膝の上で小さな子たちが手を振り喜ぶ。未就園児向けの絵本の読み聞かせ会が始まった。「子どもに読んでほしい」とこだわり抜いた絵本や児童書約2千冊から、その日足を運んでくれた親子が楽しめる本をスタッフが読んでくれる会だ。

 真っ赤なだるまが転んだり笑ったりする絵本、手遊び歌…。30分余りの会は約10組の親子の笑顔に包まれた。3歳の長男と8カ月の長女と訪れた女性(38)は「長男が生まれて間もない頃から通っている。ここで歌った歌を口ずさむようになったんです」。店で成長していく息子の姿に顔がほころぶ。

 45年にわたり、本と人を結び続けてきた。1973年、本を愛する夫妻が同区で始めた店は、児童書専門店の草分け的存在だ。夫妻は後に北海道へ転居したが、地域のママらが店を引き継ぎ守ってきた。20人ほどのママたちがボランティアで運営を担う。

 閉店の危機が何度もあった。6年前には入居する建物の老朽化が問題となり、引っ越し資金の余裕もなかったが、「お店をなくしたくない」とスタッフが奮起。募金などでまちの人たちにも支えられ、今の店になった。25年ほど勤めるスタッフ(57)は「経営危機のたびに『みんなでこの場所を残そう』って声が上がる。不思議ですよね」とほほ笑む。

 本と人、人と人の距離が近いことも「この店らしさ」だ。ゆっくりと相談しながら、スタッフがぴったりの一冊を一緒に探してくれる。「まだ1カ月なんです」。ママがお薦めの絵本を尋ねると、スタッフがかわいらしい動物の顔がたくさん描かれた絵本を本棚から取り出す。ページをめくると、小さな男の子はじっと見つめる。一緒に絵本を楽しみながら、子育て話に花が咲いた。

 「スタッフにとっても来てくれる方にとっても、気楽にいられる場所になれたら良いなって」。10年ほど勤める別のスタッフ(54)も目を細める。身の回りでは経験できない世界が本を通して広がっていく-。絵本が楽しめるだけではない「ともだち」は出会いが広がる居場所だ。「小さい頃、親に連れられて来ました」と、わが子と訪れるママもいる。ママ友の口コミや会員制交流サイト(SNS)で知り、遠方から訪れる人も少なくない。

 活動の場も広がった。地区センターや小学校などへの出張読み聞かせや、「大人が聞くことも大切」との声が自然と湧き上がり大人向けの読み聞かせ会も。子育て世帯へ情報発信ができればと地域情報紙も置く。

 スタッフは言う。「ともだちの連鎖っていうのかな。自然にともだちが増えていく不思議な場所なんです。誰でもふらっと気軽に立ち寄ってくれたらうれしいです」

 横浜市営地下鉄日吉本町駅から徒歩約5分。ボランティアスタッフを募集中。問い合わせは、ともだち電話045(561)5815。

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