仕立ての匠 現役3人|カナロコ|神奈川新聞ニュース

仕立ての匠 現役3人

「テーラー絶やさぬ」組合解散後の会館に オーダーメードの店

ミニチュアの見本を手にする渡辺さん(中央)と遠藤さん(右)、鈴木さん=横浜市中区の「オーダーサロン仕立屋」

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 「洋服会館」の看板が掲げられている横浜市中区のコンクリート造りの4階建てビル。2階には紳士服を仕立てる職人、テーラー3人が店を構える「オーダーサロン仕立屋」がある。

 9月中旬、同店代表の遠藤良次さん(79)=同市鶴見区=が大量のウール生地を運び込んだ。その数、背広250着分。「県内で唯一残っていた問屋が店を閉めることになり、引き取ることになった」

 仕立て職人も減っている。テーラーが加盟する県洋服商工業協同組合は1960年、洋服会館を建設。最盛期の68年には組合員数は562人だったが、2014年には70人ほどになり、解散することになった。

 会館も売却されたが、新所有者の好意で看板やビル名は残った。こうした思いを受け、遠藤さんらは「テーラーの明かりを消してはいけない。拠点があれば客の信用を積み重ねることができる」と、翌15年に間借りして開店した。

 かつての注文客は医者、弁護士らが中心だったが、同店ではイージーオーダーや修理にも応じ、最近はサラリーマンの注文も増えているという。

 同市港南区で工房を営む渡辺十三夫(とみお)さん(79)も店を支える。「会館への愛着と道を切り開いてきた先輩に対して感謝の思いがある」と熱く語る。

 同店の売りの一つ、オーダーメードのミニチュア作りは、渡辺さんが担当する。故人の服や、学生時代の思い出が詰まった学制服…。ネームタグや裏地はそのまま、ボタンは小さいものを使用する。「できるだけ、思い出の品を残すようにしている。通常のオーダー服以上に手間がかかるが、喜んでもらえるのが何よりうれしい」と話す。

 横浜に進出した最初のテーラーは、1863(文久3)年に開業したラダージ・オエルケ商会とされる。

 「仕立屋」の技術担当で、県卓越技能者の鈴木孝さん(81)=同市港南区=は「横浜は洋裁業の歴史が古く、元町の『ハマトラファッション』に象徴されるように流行の発信地。技術を何とか残したい」と、後継者育成に意欲を見せる。

 見本品や多様な生地が並ぶ店の奥にはミシン、アイロン数台を備えた作業スペースを設け、毎週水曜には仕立屋教室を開く。講師は鈴木さん。8月から学ぶ伊藤千鶴子さん(62)=同市港北区=は、「プロの腕を間近に見ることができる。基本を学ぶ大切さを日々実感している」という。

 客の要望に応じた服地選びから始まり、デザインを決め、採寸する。製作工程は型作り、生地の裁断、仮縫い、縫製などと多い。背広作りでは、アイロン操作などでさらなる技術が必要とされる。

 「100%満足できたと思った仕事はこれまでないが、生涯現役でいられることが幸せ。大勢の人に個性豊かに好きなデザインで、体形にあった服を着てもらいたい」と、鈴木さんは服と客に優しいまなざしを向ける。

 オーダーサロン仕立屋は不定休。問い合わせは、同店電話045(681)7529。

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