時代の正体〈543〉「望む未来」選ぶため|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈543〉「望む未来」選ぶため

記者の視点 デジタル編集委員・石橋 学

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/10/21 12:46 更新:2017/12/08 23:26

政党より人情


 男性は安倍政権の5年間を必ずしも評価していないという。景気回復の実感はなく、財政再建は後回しにされたまま将来の不安は増し、望んだわけではない特定秘密保護法や安全保障関連法が作られ、そこに「独裁」をみていることを語り、しかし、「北朝鮮の問題がなければ違う選挙情勢になっただろうけれど」と受け入れてしまうのだった。免罪符、あるいは自己弁護のように響く「北朝鮮」の3文字。

 私は尋ねた。

 -北朝鮮情勢の悪化も、拉致問題で強硬姿勢を取り続ける安倍政権の無策の結果とは思えませんか。

 男性はやはり不満を語った。

 「そうですね。小泉(純一郎)さんのように乗り込んで直接対話すればいいのに。そうしないのは米国に気を使っているからでしょう。自国の防衛の問題なのに米国任せ。そこがよく分からない」

 いや、むしろ分かっているようだった。「北朝鮮を完全に破壊するしかない」などと脅し文句を繰り返すトランプ大統領に、安倍首相は国連演説で「必要なのは対話ではなく圧力だ」と呼応してみせた。

 -米国に任せ、圧力を加えるほど暴発の危険は高まりそうです。

 「米国も水面下で交渉し自国には撃たせないという約束を取り付け、落としどころにするはず。日本は二の次。暴発でもされたら被害を受けるのは日本です。先日、ラジオで誰かが言っていたけど、武力では何も解決しないんですよね。本来、仲介役になるべき。隣国なのだから」

 -そう思います。

 「でも政治家にとって武力を振りかざす方が都合がいい。これを機に自衛隊を軍隊に近づけたい野望もあるでしょうから」

 -それはあなたが望むことでしょうか。

 「いいえ。それこそ国民そっちのけでしょう」

 男性は思い出したように「同級生がこんなこと言っちゃっていいのかな」と苦笑した。集会は始まっている。私は問いを急いだ。

 -自民党が大勝すれば安倍首相は圧力路線に信任を得られたと胸を張り、事態は望まぬ方向に進むかもしれません。

 「安倍さんのやり方に反対する気持ちが強いのは支持率が下がっていることからも事実でしょう。かといって民進党は分裂し、誰を首相指名するかも分からない希望の党に任せるわけにもいかない。その意味では立憲民主党は託してみようと思う人が増えるかもしれない。姿勢ははっきりしているから」

 -ご自身は託してみようと思わないのですか。

 「そこは同級生なんで。政党じゃなくて人情。日本の政治のいいところでも悪いところでもあるのでしょうが」

 即答だった。私は落胆した。人ごとのような響きに、これまでと変わらぬ選挙の風景に。男性はこうも言っていた。

 「投票が意思表示だとすれば、理由まで書き込めればいいのだけれど。『ほかに適当な人がいないから』とか」

 仕組みがそうでない以上、別の選択はあり得ないのだろうか。

PR