神奈川新聞と戦争(58)1933年 物々しい筆致で誇示|カナロコ|神奈川新聞ニュース

神奈川新聞と戦争(58)1933年 物々しい筆致で誇示

「防空演習の本舞台」の見出しが躍った関東防空大演習の初日、1933年8月9日の横浜貿易新報1面

 1933年8月、3日間にわたり行われた関東防空大演習を本紙の前身、横浜貿易新報(横貿)は連日にわたり紙面を割き、詳報した。10日付の1面は「三万の防護団員 港都横浜の危急に備ふ」と題し、初日の模様を伝えた。

 「帝都防衛に最も重要視される国港都市横浜市は午前七時すべての準備完了、一天うらゝかに晴れて(略)正に絶好の演習日和ながら市街は一種凄惨(せいさん)な緊張味が張り切つてゐた-横浜川崎の『防護地域』は約三万の連合防護団が出動、午前八時演習開始!各部署を護(まも)つて空襲を待つ、市内には新しき科学の粋を誇る各種兵器が軍隊の手により活躍の準備整ひ、嵐来(きた)らんとして風楼に満つ[変事の前の不穏な様子]の情勢-」

 従軍記や実録小説を思わせる物々しい筆致だった。航空機や迎撃の高射砲などを指す「科学の粋」は、次のように描かれた。

 「午前八時廿(にじゅう)七分、市役所内連合防護団本部の電鈴けたゝましく鳴り関東防衛司令部より『全関東空襲!』の飛電来(きた)る(略)約五分にして艦上機一機爆音高く悠々として横浜の上空に現はる。地上は俄(にわか)に防護団員の往来繁急となれば時を移さず轟(ごう)然一発、○○[伏せ字]陣地より横浜高射砲隊の砲撃が開始(略)横浜機関銃隊が銃口を向けて覘(ねら)ひを定めた」

 「十時卅分(さんじっぷん)『神奈川地区に空襲』の警報が発せられサイレン、煙火一斉に空にとゞろく。もの凄(すご)く大きい聴音機[航空機の音を聞き取る装置]は空にラツパを向けて敵機の爆音で方向をさぐる間も無く同四十四分水上飛行艇四機づゝ二隊の襲来!(略)高度約一千米突(メートル)!○○陣地の高射砲隊は(略)『打て!』の命令一下(略)猛射開始、付近一帯の天地は振動するばかりの大音響」

 演習で軍が誇示しようとした航空戦力、迎撃力を、横貿は「科学の粋」として喧伝(けんでん)した。

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