〈時代の正体〉朝鮮学校無償化排除訴訟、判決を前にオモニの思い|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉朝鮮学校無償化排除訴訟、判決を前にオモニの思い

朝大生とともに文科省前で抗議に立つオモニたち=8日、東京都千代田区

【時代の正体取材班=石橋学】朝鮮学校を高校無償化制度から排除した国の判断の是非を問う訴訟の判決が13日午後2時、東京地裁で言い渡される。広島、大阪両地裁に続く3例目となる審判の時を神奈川の朝鮮学校関係者や在日コリアンも固唾をのんで見守る。原告は東京朝鮮中高級学校の生徒(提訴当時)62人。司法に訴えた損害賠償請求に込められたものは、踏みつけにされてきた民族の尊厳の救済、回復にほかならないからだ。

 8日、文部科学省前。朝鮮大学校の学生が中心になって毎週抗議の声を上げる「金曜行動」に神奈川朝鮮中高級学校(横浜市神奈川区)のオモニ(母親)会会長、金(キム)星樹(ソンス)さん(48)の姿があった。

 「夏休み中にもかかわらず集まる朝大生を誇りに思うと同時に、一体いつまで声を上げ続けなければいけないのかと思う。でも、踏まれれば踏まれるほど、きっと私たちは強くなる」

 子どもたちの姿に心が奮い立つ思いだった。

 137回目を数えた金曜行動で繰り返された「朝鮮学校差別、反対」「学ぶ権利を保障しろ」の訴え。 朝鮮人だから、朝鮮学校だから理不尽な排除は許されるというのか―。裁判の意味を金さんがあらためてかみ締めたのは7月28日に下された大阪地裁判決によってだった。学校側全面勝訴の一報に涙があふれた。

 「国を相手にした裁判で在日朝鮮人の声が受け入れてもらえるなんて思ってもいなかった。初めて自分たちの存在が認められた。これは歴史的なことだ」

 その9日前の広島地裁では学校側の訴えが退けられていただけに、「存在を認められた」という初めて実感に体が震えた。オモニ会のLINEは「やったー」「朝鮮人の底力」「子どもたちの力になる」と歓喜の文字であふれた。

 東京地裁判決前最後の金曜行動には全国の朝鮮学校からオモニ会のメンバーが集まっていた。金さんの1歳下の幼なじみ、大阪朝鮮高級学校のオモニ会会長、高(コ)吉美(キルミ)さんの言葉が心強かった。

 「学ぶ権利はすべての子どもが当然受けられるべき権利。自国の言葉や歴史、朝鮮人としての誇りを教えてくれる学舎は朝鮮学校しかなく、私たちの大切な財産だ。大阪地裁ではその声がしっかり届き、歴史的勝利を勝ち取った。これから判決を迎える東京、愛知、福岡もこれに続き、広島高裁でも逆転勝訴が得られると信じている」

 金さんは「差別が日に日にあからさまになっている」と感じてきた。2013年、無償化制度の適用を求め都内でデモ行進すると沿道から「朝鮮へ帰れ」と罵声を浴びせられた。大の大人が目をむき、舌を突き出している。常軌を逸した姿に対話の成り立ちようのなさを思い、途方に暮れた。追い打ちをかけたのが、県内に5校ある朝鮮学校に通う子どもたちに県が支給してきた補助金の打ち切り。国や自治体による公の差別が一般の人々の差別にお墨付きを与え、後押ししていると思えてならない。

 「サッカーの試合で明らかに日本人チームに肩入れした笛を吹く審判に当たったこともあった。子どもたちがつらい目に遭うたび、腐ったら駄目、強くなりなさいと言わねばならなかった」

 朝鮮人というだけで、人の2倍も3倍も頑張れなどという、それ自体が差別の存在を突き付ける言葉をすすんで口にする親がどこにいるだろうか。あまりの成功体験の少なさから大阪に続く勝訴判決を信じ切れず、身をこわばらせる自分に気付いたとき、行政の誤りが再びただされ、子どもが子どもらしく、思うままを生きられる社会への道筋が確かに示されれば、と心から願った。

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