庶民の歴史を“妄想”|カナロコ|神奈川新聞ニュース

庶民の歴史を“妄想”

ブックカバー

「YOROZU~妄想の民俗史~」

 「『これってどういうこと?』と考えることが読むこと。日ごろからの妄想を紙に書きつけることができた」

 ロックバンド「アジアン・カンフー・ジェネレーション」のボーカル・ギター、後藤正文が書き下ろした「YOROZU~妄想の民俗史~」(ロッキング・オン・1944円)は「日本残酷物語」シリーズと出合い、教科書に載らない庶民の歴史について考えるきっかけを得た後藤が、その暮らしなどに思いをはせ、史実とフィクションを織り交ぜてつづった「妄想歴史小説」だ。

 文字として残されていない日常は、白山晰也著「眼鏡の社会史」(ダイヤモンド社)などさまざまな本に目を通し想像を膨らませた。キリスト教宣教師、フランシスコ・ザビエルが、周防(山口県)の殿様・大内義隆に面会した際に贈ったとされる眼鏡の話では、初めて南蛮人を目にした庶民のフィーバーぶりを、モッシュやダイブをして盛り上がる、ロックフェスと重ねた。

 単行本には読書用BGMとして、三味線など全ての楽器をひとりで演奏した46分に及ぶCDを付けた。水が流れるような音、衝突音。5回ほどの即興を経て生み出した音は、採譜もできなければ、再現性もない。想像をしても、人間のあれこれを譜面のような形で書き残すことは不可能。歴史もそう。不思議な浮遊感の中で、脳が溶けていくような感覚を覚えた。

PR