時代の正体〈497〉道徳教科化(上)いじめ助長の恐れ

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/07/15 15:51 更新:2017/07/15 15:51
道徳教科書がいじめを助長する恐れがあると指摘する教諭

道徳教科書がいじめを助長する恐れがあると指摘する教諭

 【時代の正体取材班=成田洋樹、松島佳子】道徳教科化で2018年度から初めて使用される小学校教科書が今夏、県内各自治体教育委員会で採択される。教科書が推奨するルールや規律の徹底は何をもたらすのか。教科化の先行きを不安視する教諭や母親たちは「生きづらくなる子が出てこないか」と口にしている。
 

良い子ども像


 県内の市立小学校に勤める佐藤和子教諭(仮名、30代)は6月、職場で同僚と一緒に道徳教科書を読み比べた。採択に向けて全8社の特徴を研究し、市教委に報告するためだ。

 各社とも、大人が求める「良い子ども像」を子どもに押し付けるような教材が少なくなかった。「ルールを守ろう」「集団からはみだしてはいけない」というメッセージを発している印象を拭えなかった。

 学校には、教科書が求める「良い行い」をできる子もいれば、授業中に立ち歩いたり、大きな声を出したりする子もいる。何かが「できる、できない」で子どもたちを序列化したり分断したりするのではなく、さまざまな特徴がある子たちが共に過ごすにはどうすればいいか。佐藤さんはいつも心を砕いている。

 「教科書の内容をそのまま教えてしまっては、『良い行い』をなかなかできない子は『あの子はダメな子』とレッテル張りをされ、クラスメートから厳しい目を向けられることにならないか。教科書がきっかけとなって誰かを排除したり、いじめを助長したりすることにならないか」

 大津市いじめ自殺事件が道徳教科化につながり、いじめについて考える教材は全社の教科書に採用されている。だが、国のいじめ防止の狙いとは裏腹に、教科書自体がいじめの引き金になってしまう恐れを口にした。

 同じ懸念は、横浜市内在住で長男が小学校6年生の母親(37)にもある。一部の教科書会社が1、2年生の道徳教科書で採用している「るっぺ どうしたの」という教材に触れたからだ。規則正しい生活の大切さを説く内容で、文部科学省が作成して学校現場に配られている副読本「わたしたちの道徳」の1、2年生用にも採用されている。

 るっぺ君は朝、お母さんに起こしてもらわないと起きられない。靴のかかとを踏みながら登校する。それを友達に注意されて前かがみになって直したとき、留め具を締めていなかったランドセルから文房具を路上に落としてしまう。学校では砂場の砂をクラスメートに向かって投げてしまう。

 「うちの子みたい」

 発達障害の「グレーゾーン」とされている長男の行動に似ていた。

 ある社の設問では、るっぺの行動を「問題」と捉える視点から子どもたちに問い掛ける。

 〈るっぺのこまったところを、みんなで話し合ってみましょう〉
 〈るっぺのようにならないようにするために、自分はどうすればよいか、みんなで話し合ってみましょう〉
 教材通りに教えてしまっては周囲と同じように規則正しい行動ができない子が一方的に責められ、追い詰められてしまわないか。母親の不安は募る一方だ。

 「教科書がいじめを誘発する内容になってしまっている。互いの違いを認めて助け合うことを学ぶことこそ大切なのではないか」

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