〈時代の正体〉政治活動を隠れみのにする日本第一党 差別扇動者の話法(下)|カナロコ|神奈川新聞ニュース

〈時代の正体〉政治活動を隠れみのにする日本第一党 差別扇動者の話法(下)

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  • 公開:2017/05/22 05:22 更新:2017/09/27 15:00
【時代の正体取材班=石橋 学】人種差別・排外主義政策を掲げる極右政治団体「日本第一党」が都議選の立候補予定者の記者会見を都庁で開いたのは4月27日のことだ。

 「日本第一党のスローガン、ジャパンファースト、日本第一主義が信条」

 「自分の信じる意見を発信し、記録に残るところに、私たち日本第一党の気持ちを残していきたい」

 今年2月に結党した日本第一党初の公認候補、八王子市選挙区(定数5)に立つ同市在住の岡村幹雄氏は落ち着いた口調で抱負を述べた。新潟県出身、法政大経営学部を出た後、都内の郵便局勤務などを経て3月に日本郵政株式会社を定年退職したばかり。折り目正しい物腰が印象的な60歳。会見で語られたのはしかし、この国のヘイトスピーチを先導してきた党首、桜井誠氏に重なる話法だった。

 主な公約に掲げたのは、築地市場の豊洲移転早期実施と移民受け入れの中止、外国人への生活保護の支給停止の3点。このうち「特に心配している」と強調したのが移民の受け入れだった。国家戦略特区を活用して東京都で4月から始まった外国人労働者による家事代行サービスに「(在留期限の)3年で帰る人は少ないのではないか」との懸念を示し、「移民受け入れがなし崩しで行われるのではないか。外国人に頼れば、次世代に大変な負の遺産を残す。大変心配している」という。

 「3年で帰る人は少ないのではないか」という根拠のない疑念を向け、すでにさまざまな産業が低賃金の外国人労働者に支えられている現実を無視して「大変な負の遺産」「大変心配」と不安を強調する姿に、隣に同席した桜井氏が重なって映る。旧植民地出身者として歴史的、構造的に差別を受けている在日コリアンは「優遇されている」「特権がある」という事実と正反対のデマを流通させ、不公平感や危機感を喚起することで排斥感情をあおるのが差別扇動者、桜井氏の常套(じょうとう)手段だからだ。

 質疑応答で私は桜井氏の言動を岡村氏がどう感じているのかをただした。差別を率先して非難し、禁止を市民に働き掛けるべき政治家に求められる人権感覚や反差別の姿勢が受け答えに表れると考えたからだ。

 昨年7月の都知事選に立候補した桜井氏は「日本で生活保護をもらわなければ、きょうあすにも死んでしまうという在日(コリアン)がいるなら、遠慮なく死になさい」という差別発言を街頭演説で行っている。私が「岡村さんも同じ考えか」と尋ねると「言葉だけを切り取ると大変強烈になるが」と前置きして答えた。

 「出入国管理法及び難民認定法では、自立した生活ができない外国人は上陸できないとなっている。その点からも基本的な考え方は党首と同じだ」

 人権への理解はおろか、国際社会の一員としての認識をそこに見ることはできない。外国人への生活保護は、人道的観点から生活保護法による取り扱いに準じた行政措置として行われている。対象は原則的に永住者、定住者、特別永住者、難民認定者などで、日本社会の構成員として暮らし、納税の義務を果たしてきた外国人を等しく処遇するべきだという考えに基づく。何より、先進国として国際社会と交わした約束でもある。日本が加入・批准した国際人権規約と難民条約は社会保障における「内外人平等待遇の原則」が条件になっている。そこに入国管理行政の発想を持ち込むのは筋違いだ。

 厚生労働省保護課も「出入国管理法は入国時の条件を既定しているにすぎない。日本に入ってきた後に失業したり、病気になって働けなくなったりすることは十分あり得ることで、人道上必要があると判断して行政の裁量で保護を行っている。(外国人は生活保護法の対象ではないと判断した)2014年の最高裁判決でも行政措置による外国人への生活保護自体は違法ではないと確認されている」と話す。

 そもそも私は、最後の命綱である生活保護を断ち切るという非人道性と、外国人を「死んでも構わない」存在とみなす差別思想を問題にしている。「『遠慮なく死になさい』という発言にも同調するか」と重ねて問うと、岡村氏は「逆に聞きたいが、生活保護を受けなければ直ちに死んでしまうという方を見たことも聞いたこともない。そういう状況があるとお考えか」と問い返してきた。

 こちらの質問には答えず、逆質問で異なる論点を示し、議論をずらすのも桜井氏流。私は「そうした状況にある人は実際にいて、最後の命綱である生活保護を絶つのは重大な人権侵害だ」と答えたが、岡村氏は「助けるのは国籍のある国。自分の国籍の国にお願いするのが筋と考える」。前述の通り、外国人を平等に扱うのは国際条約上の義務であり、困窮した外国人への扶助制度はドイツをはじめ欧州などの先進国で一般的だ。そう指摘すると、今度は「欧州とは制度も金額も異なる。日本と比較するのは間違いだ」と、制度の違いという本質から離れた議論にすり替える。そうして桜井氏をなぞった主張が冷たく響くばかりだった。

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