時代の正体〈461〉自民党資料の徹底分析(上)必要性の論拠乏しく|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈461〉自民党資料の徹底分析(上)必要性の論拠乏しく

共謀罪考

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/04/26 14:33 更新:2017/04/28 00:44
「共謀罪法案」について質疑に答弁する安倍晋三首相(左)と、金田勝年法務相=17日午前、衆院決算委員会

「共謀罪法案」について質疑に答弁する安倍晋三首相(左)と、金田勝年法務相=17日午前、衆院決算委員会

 4枚つづりのタイトルは「テロ等準備罪関連資料の送付について」。自民党が3月31日、所属議員宛てで配布した。いわゆる「共謀罪法案」について、「必要性」や「成立要件」「対象犯罪」と論点を三つに分け解説するとともに、批判に対する反論をまとめている。だが、この資料を詳細に読み解くと、欺瞞(ぎまん)や曲解、根拠なき断言であふれていることが分かった。政府・与党は法案を5月中旬にも衆院通過させる意気込みだ。自民党資料を基に「共謀罪」を徹底検証する。初回は「必要性」について。

 自民党資料の「必要性」には、3年後の東京五輪のために「テロ等の組織犯罪を未然に防ぐための国際協力が不可欠」とした上で、「国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結を急がねばなりません」と記載している。この条約については「国連加盟国(193カ国)で未締結の国は、わが国を含め11カ国のみです」とある。

 条約締結には「重大犯罪の実行の合意を犯罪化」しなければならず、国内法の整備が不可欠で、そのためには「テロ等準備罪」を新設する「組織的犯罪処罰法」の改正が欠かせないとしている。

 だが、2004年にTOC条約について国連がまとめた「立法ガイド」の第51項によると、共謀罪の立法は義務ではない(without requiring)と明記している。無視できない食い違いだ。

 さらに、数多くの締結国の中でノルウェーとブルガリア以外の国は、新たに共謀罪を立法することなく条約を締結している。

 そうであれば、共謀罪を立法せずとも条約を締結できるのではないか。その批判に自民党資料にはこう反論が示されている。

 〈野党の一部は、国内法を整備しなくてもTOC条約を締結できると言っていますが、現在のわが国の法律では、TOC条約の求める義務を果たすことができず、その隙間を埋める今回の法整備が必要となるのです〉

 なぜ義務を果たすことができないのか。「隙間」とは具体的に何なのか。隙間を埋めるための選択肢は包括的に277もの新しい「共謀罪」を作るしかないのか-。その言及はない。

「テロ対策」の矛盾


 必要性の筆頭に挙げている「TOC条約締結」だが、この条約はテロ対策とは無関係であって政府・与党の説明に矛盾がある、と指摘する声は少なくない。

 憲法学者の早稲田大・長谷部恭男教授はこう説明する。

 「政府は共謀罪の必要性として、『テロ対策』と『TOC条約締結』の二つを挙げている。だがその理由は、いずれか、もしくは両方が間違っている」

 なぜならこの条約は、組織犯罪集団、つまりマフィアや暴力団対策のためであって、立法ガイドには「イデオロギーに係わる目的など、純粋に非物質的な目的を持った共謀は、この犯罪の対象とすることを求められていない」と明記しているからだ。

 つまりテロ対策をあえて除外していると言える。

 「政府はテロ対策と無関係の条約を批准するために、『テロ対策のために共謀罪が必要だ』という論理矛盾した説明を繰り返している」と糾弾しているのは共謀罪に詳しい海渡雄一弁護士だ。

 そもそも日本のテロ対策は不十分なのだろうか。

 日本は国連による国際的なテロ対策に関する13の条約について、すでに全て批准しているという。

 また、日本の刑法は既遂処罰を原則とするものの、未遂より前段階を処罰する「準備罪」は8、「予備罪」は37、内乱など極めて重大な国家の存立に関わる犯罪では「陰謀罪」が八つ定められている。さらに特定秘密保護法や爆発物取締罰則など13の犯罪に「共謀罪」が規定されている。

 これでも本当に共謀罪でしか埋められない「隙間」があるのだろうか。

「対処できぬ」欺き


 自民党資料では「現行法では処罰することのできない事例」を挙げている。

 〈例えばわが国の現行法では、テロ組織が水道水に毒物を混入することを計画し、実際に毒物を準備した場合であっても、この時点で処罰することができません〉

 刑事法学者の京都大・高山佳奈子教授は「ひどい説明」と苦言を隠さない。「この事例では当然、殺人予備罪(刑法201条)と毒物劇物取締法違反の罪が成立する」と切り捨てる。
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