〈時代の正体〉「共謀罪に反対」声明続々 専門家3団体代表者らが結集
- 神奈川新聞|
- 公開:2017/04/13 21:26 更新:2018/07/10 14:11
人権侵害、憲法違反の恐れも
清水雅彦(民科法律部会理事、憲法学者 日本体育大教授)日本国憲法の原点は先の戦争の反省にある。単に平和主義を掲げただけでなく、三大基本原理として、国民主権、基本的人権の尊重がある。
憲法の人権規定は第3章にある。第10条から第40条まであるが、このうち3分の1を超える部分が刑事手続きに関する「人身の自由」の定めからなっている。これは諸外国の憲法と比較しても手厚い保障だ。
なぜか。それは戦前の「特高警察」による人権侵害の反省があるからだ。
憲法は国家権力制限規範と言われる。軍隊と警察という暴力装置を憲法が縛っていかなければいけない。戦前の日本でそういう経験があったからこそ、特に人身の自由規定を手厚くしているという背景がある。
こうして考えた場合、共謀罪が成立した場合、戦前の警察国家になってしまうという懸念がある。
憲法の原点をいま考えなければいけない。
内心が処罰されれば、憲法第19条で保障されている「思想良心の自由」という権利が侵害されることになる。そして第31条では(犯罪は事前に法で定めて置かなければならない)「罪刑法定主義」と「明確性の原則」を定めているが、これも侵害されかねない。
通信傍受法が改正されれば、室内盗聴や街頭での会話の傍受も可能になり、それは13条から導かれるプライバシー権の侵害となる。それは21条が保障する「通信の秘密」も脅かされることとなる。
こうした見方から私は違憲立法だと思っている。
自民党は2005年に「新憲法草案」を発表した。このとき、人権と人権が衝突した場合の調整原理である「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えている。
05年案を発表する前段階の「新憲法起草委員会各小委員会」では、「国家の安全と社会秩序」という言葉を使っていた。
つまり自民党の本音は、人権と人権がぶつかった場合に人権を制限する、という発想ではなく、国家の安全が優先する場合に人権を制限するのだ、という考え方だろう。
これは2012年「日本国憲法改正草案」にも引き継がれている。
この改憲草案では新たに21条2項に「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という規定まで入れている。
国家の論理で人権を制限するだけでなく、国家の安全を脅かすような結社まで禁止しようとしている。治安維持法のような発想が、自民党の改憲案に入っているということ。その先取りとして、既に特定秘密保護法を定め、共謀罪の成立を目指している。
これから自民党が目指す改憲を阻止するためにも、憲法学を専門とする者として、共謀罪阻止を言っていかなければいけないと思っている。
善悪の判断基準が崩壊
新倉修(民科法律部会理事、刑事法学者 青山学院大名誉教授)私たちは反対しているこの法案に賛成している人もいる。弁護士の中にもいる。こうした人たちは共謀罪が成立しても私たちは適用されないと思っているのだろう。
だがそこが最も危ない点だ。
「自分は絶対に適用されない」ということはあり得ない法律だということを指摘しておきたい。
自分は絶対安全だと言える人は、この法律を自分の有利なように適用できる権力を持っている人だけだろう。
ちょっと話が違うが「シリアで化学兵器が使われていた」という。国連では米国大使が亡くなった子どもの写真を手にして「このまま放置していいのか」と言っていた。
当然それは安全保障理事会でシリアへの制裁決議を得る目的でやったわけだが(常任理事国の)ロシアは反対し、中国が棄権し決議は出なかった。
それでも米国は地中海に軍隊を展開し、59発ものミサイルをシリアに撃ち込んだ。これは明らかに国際法違反であり、犯罪だ。米国はこのことを安倍首相にも伝えている。その上で安倍首相は「米国の決意を支持する」と言った。
米国は北朝鮮にも同じようなことをやろうとしている。重装備の軍隊を朝鮮半島へ向かわせている。これは国際法的に武力行使の威嚇に当たる。ほとんど戦闘行為に入っていると言っていい。そのことを安倍首相は知っている。
なぜいま、こんな話をするか。
言いたいのは、...