時代の正体〈458〉保育園落ちた声 今春も|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈458〉保育園落ちた声 今春も

 「いま困っているママだけでなく、社会のみんなで声を上げ続けていくしかない」。匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね」に端を発したムーブメントから1年。国が対策を打ち出してはいるものの、待機児童問題は依然として解消の兆しが見えない。「保活」に神経をすり減らす母親たちは、この春も集会やインターネットで切実な思いを訴えている。

 「待機児童問題の集まりというと、どうしても『女たちが怒っているぞ』というニュアンスで伝わってしまいやすいけれど、そうじゃない」。東京・永田町の衆院議員会館で母親らが開いた集会。会社役員の天野妙さん(42)=東京都武蔵野市=は笑顔でマイクを握った。「今の状況をはっきり説明して、みんなの問題として社会で考えていかないと、と思う」

 天野さんは2月初旬、インターネット上で「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」を立ち上げた。自身の子は「運よく入園できた」が、「当事者の母親だけしか声を上げない状況をみんなで変えたい」と決意、ツイッターなどで呼び掛けを始めた。

 ママ友と保育園を話題にしても、昨年流行語大賞にもなった「日本死ね」という言葉も、根底に流れているのは怒りの叫びだった。不満の声を伝えるのは大切だと思う。「でも、気持ちだけでは保育園は増えなかったし、怒ることで地域内や世代間の分断も生んでしまうと感じた」

広まり


 反響は、すぐにあった。

 ハッシュタグ「#保育園に入りたい」で投稿を呼び掛けたところ、悲痛な訴えは約半月で2千件を超えた。「今春入園を目指して保活(保育施設に入れるための活動)しているが全部落ちた」と吐露する親。自治体から送られてきた入園の不承諾通知(保留通知)の写真を投稿する親。「ほとんど給料が上がらない現状、保育士不足は当たり前」「保育士なのに保育園落ちて職場復帰できない」と嘆く保育士。

 署名サイト「Change.org」でも賛同が1万筆を超えた。このサイトで「現状や待機児童問題の将来について話し合い、国会議員などに直接アピールする場を」と天野さんが設けたのが、3月7日の集会だった。

 連絡はフリーメール。チラシ作りも手弁当。会場の手配以外、全て有志による企画だが、当日は父母ら約150人が集まった。

次世代


 川崎市川崎区から参加した來嶋由香さん(38)は、4月に第3子を出産予定。臨月の現在も働いているIT系企業は育休が2カ月しか取れないため、職場復帰できるか不安は大きいという。「きょうだい2人が既に保育園児で、点数(入園の優先順位)は高い。でも年度明けから保活を始めることになるから、空きがなければ入れない。子どもは授かりもの。何月に生んで何月に保育園入れてなんてスケジュールは組めない」

 集会では、保活当事者以外の発言も相次いだ。

 「うちの子どもの時も保活は大変だった」と語るのは、17歳と10歳の息子がいる相庭貴子さん(45)=同市麻生区。今の印象は「むしろ悪化している気がする」とし、「長男は数年すれば結婚するかもしれない。もう次の世代まで来ている。本腰で解決策を取らなくては」と呼び掛けた。

2度目


 この1年、国が中堅保育士の給与を4万円上げる改善策を出す方針を決めたり、自治体が小規模保育所を新設する予算を確保したり、少しずつ改善の動きは出ている。しかし、待機児童問題は依然として深刻な状況から抜け出せていないのが実情で、父母らが窮状を訴える集会はこの春も各地で開かれている。

 「昨年は、どこか人ごとだと思っている自分がいた。当事者になるまで関心を持たなかった」

 「昨年ヤバいとは感じていたが、想像以上だった。なぜ公的なサービスを受けられないのか。子どもの未来を考えるのは楽しいはずなのに、なぜこんな気持ちになるんだろう」

 2月に開かれた集いには昨年と同じ顔も。昨春は街頭演説にも参加した保育士の町田ひろみさん(50)=東京都多摩市=は「保育士の処遇が悪いと有名になったからか、現場の人手不足は昨年より厳しくなっている」。

 子どもを保育園内の事故で亡くした阿部一美さん(38)=さいたま市=は安全な保育環境の実現を訴え、続けた。「この1年、これだけ待機児童問題や保育士のことが問題になったのに、何も変わっていないように感じる。応急措置の政策では、必ずどこかにひずみが出る」

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