チケット転売問題考(上) モラル任せが実情|カナロコ|神奈川新聞ニュース

チケット転売問題考(上) モラル任せが実情

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/03/25 11:21 更新:2017/04/08 11:45
 人気バンドやアイドルのコンサート、スポーツ観戦、レジャー施設などを楽しむのに欠かせない入場券。予約・発券業務を代行するプレイガイドで「完売」と表示されるプレミア券でも、街中にある金券ショップやインターネットのオークションサイトなどでは日々、取引がなされている。売買情報を掲載する国内最大手のサイトでは〈転売目的でのチケット購入、販売は固くお断りさせて頂きます〉と記されているが、入手困難なチケットは定価の何十倍にも高騰するため個人や業者が転売目的で利用している実態が見え隠れする。音楽業界は「本来求めている人が生の演奏を楽しむ機会を奪う」と危機感を強めている。 

 〈私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します〉

 こんな意見広告が2016年8月23日、読売新聞と朝日新聞に掲載された。日本音楽制作者連盟(音制連)、コンサートプロモーターズ協会など四つの音楽関係団体とともに、「嵐」や「サザンオールスターズ」など116組のアーティストが賛同を表明した。

規制はなし


 転売と言えばすぐに思いつくのが、人気コンサートなどの開催会場周辺で中に入れないファンらに「チケットあるよ」などと声を掛けるダフ屋行為だ。これは各都道府県が定める「迷惑防止条例」で取り締まっている。「公共の場」で「不特定の者」につきまとい、呼び掛けて売ったりする行為が処罰の対象となる。ただ、転売そのものを罰するのではなく、公衆の秩序を乱したり、反社会的な組織への資金源となったりするのを防ぐことに主眼が置かれている。

 また、「不当に高価な」あるいは「暴利となるべき」価格で売買されることを防ぐ手だてとして「物価統制令」がある。これは戦後の闇市などで物品の値段が高騰するのを抑えるために定められた。現在では公衆浴場に適用されている程度だ。

 つまり、自由経済が認められている現代日本では、いかに高値となっても売買行為自体を摘発する法律はない。インターネット上の売買も「公共の場」とされず、規制対象になっていないのが現状だ。

宿主と寄生虫


 主催者側と購入者との契約規約が記されているチケットには転売について〈営利目的での転売は固くお断りしています〉という一文がある。

 ただ、入場券を持つ顧客側も事情が変わり、出向くのが難しくなり、誰かに譲ることは起こり得る。その場合でも、主催者は「購入者の希望により発券したチケットは理由のいかんを問わず交換や変更はできない」と主張。払い戻しも興行中止や延期など、特例を除き対応しないのがほとんどだ。

 公演などに行けなくなった人、一方で完売チケットを購入したい人の双方のニーズを満たす場として登場したのが、国内最大手のサイト「チケットキャンプ」だ。運営する「フンザ」(東京都渋谷区)が2013年にサービスを始めた。

 同社は、両者で売買契約が締結された後に、システム利用料や取引手数料などを徴収している。手数料は3月から買い手に対しては無料、売り手に対しては販売価格の8・64%(販売額が8千円以下の場合は一律690円)と定めている。

 サイトは立ち上げからわずか数年で、月間利用者数500万人、月次の流通総額は数十億円と急成長を続けている。

 この手法に異を唱えるのがコンサートプロモーターズ協会で総務役員を務める石川篤さん(51)だ。「特別な場合以外、チケット料金の払い戻しに応じないなど、われわれの販売方法にも問題はあった」とするが、チケットキャンプ側に「定価での売買」を提案している。

 石川さんによると、フンザは「不要になってしまったチケットの救済処置(転売など)が整備されないことについてどう考えているのか。飛行機や列車、ホテルなどの予約は直前でもキャンセルができるのに、興行チケットが売りっぱなしなのは乱暴ではないのか」と反論。「空席を作らないことが、イベントの活性化につながる」などと回答があり、両者の主張は平行線のままだという。

 神奈川新聞社はフンザの笹森良社長に取材を申し込んだが、音制連などとの話し合いの事実や見解についてコメントを得られなかった。

 石川さんは「音楽業界を宿主とするとチケットキャンプは寄生虫」と厳しい言葉を使う。「寄生虫だけが栄えると、宿主を殺してしまう。若い世代の音楽離れが加速し、音楽業界が衰退してしまう」と懸念する。

欧米との差


 欧米では、座席の位置や公演日などにより、料金に差をつけてチケットを販売している。

 ところが、...

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