育て復興の芽 原発事故制限解除で販売再開 釜石・原木シイタケ|カナロコ|神奈川新聞ニュース

育て復興の芽 原発事故制限解除で販売再開 釜石・原木シイタケ

東日本大震災6年

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/03/25 09:45 更新:2017/03/25 11:34
 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故の影響で出荷制限された岩手県釜石市の原木シイタケを復活させようと奮闘している針灸(しんきゅう)師がいる。震災前は30人ほどいた市内の生産者も大半が廃業した現状に、「地元の文化を失いたくない」と露地栽培を再開。今年に入ってようやく制限が解除され、本格販売に向け、神奈川県在住の友人らも支援を続けている。

 栽培しているのは、津波で多くの犠牲者が出た鵜住居(うのすまい)地区に住む古川貞治さん(42)。震災前から地元で針灸師として働いていた。原木シイタケの露地栽培は祖父の代から始まり、同市内で高齢者グループホームを営んでいた父も施設敷地内や近くの山で栽培し、独自ルートで販売していた。

 原発事故で放射性物質が拡散されたことから、同市では2012年4月から露地栽培の原木シイタケが出荷制限された。古川さんは、制限解除に必要なセシウム検査のための検体数が足りないと聞き、検体用として栽培を再開させた。

 だが、汚染は原木にも及んでいた。資材の買い替えや栽培場所の除染も必要になり、元々課題だった高齢化もあって、市内の生産者は次々とやめていった。

 植菌した原木を置き、シイタケを生産する「ほだ場」の除染を進め、汚染していない岩手県産の原木を調達。2年半ほどかけて約千本に菌を定着させた。父から引き継いだグループホームの運営や針灸師の仕事を続けながら、すべて一人で作業してきた。

 そんな古川さんを支援しようと、約20年前に通った静岡県内の針灸専門学校の同級生が結集。神奈川在住者も多く、会員制交流サイト(SNS)で同期会をつくり、釜石に支援物資を届けたりしてきた。

 茅ケ崎市在住の加圧トレーナー清水直樹さん(54)もその一人。震災から1年後、古川さんと釜石で再会した。小学校の窓に車が突っ込み、がれきの山となっていた街を見て、「言葉にならなかった。頑張れよ、と軽々しく言える状況ではないと思った」。それでもシイタケ栽培を再開させた古川さんを助けようと、販売に向けた宣伝用の資料作りなどを手伝った。

 努力は実り、古川さんのシイタケは今年2月末、出荷制限が解除された。しかし、栄養価を高め、うま味や香りを凝縮させるための乾燥機の購入資金が足りない課題に直面している。費用確保やシイタケの販売拡大につなげようと、インターネットを通じて資金を募るクラウドファンディングを発案。今月中に募集を始め、神奈川の友人らも人づてに販売を広げる計画だ。
古川さんは「原木シイタケは栽培に手間が掛かるが、アワビのようなコリコリした食感やキノコ本来の風味がある。寒い地方ではゆっくりと育つ分、うま味も強くなる」とアピールする。

 震災では、津波で母や親戚、知人らを失い、自宅の建物も流され、仮設住宅での生活が今も続く。「自然災害であらゆるものを失ったが、原発事故はいわば人災。地域の歴史や文化をまた一つ失うのは納得できなかった」と古川さん。

 シイタケ生産が盛んな岩手県内でも、釜石はトップクラスの栽培技術といわれる。「販売を軌道に乗せることで、市内の生産者が増えてくれればうれしい」。シイタケは順調に育ち、収穫も始まった。

 シイタケに関する問い合わせは、古川さん電話090(8251)5240。

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