〈時代の正体〉抑止の働き掛け要請 「ヘイト」講演会巡り川崎市に市民団体
- 社会|神奈川新聞|
- 公開:2017/03/15 02:00 更新:2017/07/14 12:43
瀬戸氏が参加した「川崎発!日本浄化デモ」には1千人規模の市民が抗議に集まった=2016年1月31日、川崎市川崎区
講演会は、市総合自治会館を会場に「ヘイトスピーチと表現の自由」との題目を掲げる。会館は市の施設で、市が出資する財団法人市市民自治財団が管理運営し、貸し出しを許可した。
要請書では、極右政治団体「日本第一党」最高顧問でもある瀬戸氏を「何度もヘイトスピーチを繰り返してきた確信犯的なヘイトスピーカー」として「無策のままヘイトスピーチが行われ、SNS(会員制交流サイト)上で公開されれば当事者は傷つけられ、何の制約もなく開催できたと宣伝され、今後も繰り返される」と事前抑止の必要性を指摘。ヘイトスピーチ解消法を示し、▽ヘイトスピーチを行わないよう働き掛け、その約束を交わす▽講演会でヘイトスピーチが行われた場合、講演会の中止を求める▽行われたことが確認された場合、今後施設の利用を認めない-ことを求めている。
在せ日外国人の差別・排外主義を唱道してきた瀬戸氏は、都内などで行われるヘイトデモに繰り返し参加。昨年1月31日、在日コリアン集住地区である川崎区桜本を標的に行われた「川崎発!日本浄化デモ」でも、「ゴキブリ朝鮮人は出て行け」「敵をぶち殺せ」と叫ぶデモ隊の一員として在日コリアンの家々の軒先に迫った。このデモによる人権侵害が立法事実となり、ヘイトスピーチは許されないとする解消法が成立した経緯がある。
自民、公明、民進みらい、共産の各会派と無所属の市議に要望書を届けた在日コリアン3世の崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さん(43)は「デモでなく集会ならばいいのだろうと巧妙化、悪質化している。事後の対応として貸さないという判断をするためにも、事前に働き掛けをして、ヘイトスピーチはしないという約束を取り付けておく必要がある」と強調する。「約束ができないということはヘイトが目的だ、ということになる。解消法が施行されたいま、約束をしてくださいという働き掛けをするのは、市にも施設にとっても十分可能だと思う」
福田紀彦市長は昨年5月、3度目をうたった「日本浄化デモ」のために市の公園を使うことを認めなかった。ヘイトスピーチによる取り返しのつかない人権侵害の重大さを鑑み「市民の安全と尊厳を守る」と宣言した判断が、その後の事前規制に取り組む出発点となった。崔さんは、現在進められている、全国初となるヘイト目的の公的施設の利用を制限するガイドラインと条例づくりに触れ、「いま野放しでヘイトスピーチが行われれば、市民、行政、議会が一体となって根絶に向かってきた歩みが踏みにじられる。川崎を見習い、後に続こうとしている他の自治体にもブレーキを掛けることになる」と訴えた。