「生保受給者を傷付けた」 検討会初会合で厳しい声

小田原市職員・不適切表現ジャンパー問題

問題点を洗い出し、改善策を取りまとめる予定の「生活保護行政のあり方検討会」=小田原市役所

 生活保護業務を担当する小田原市の職員が「保護なめんな」など不適切な表現をプリントしたジャンパーを作成・着用していた問題で、生活保護行政を巡る市の課題が改めて浮かび上がった。「全国の生活保護受給者が傷付いた」「制度に対する知識や理解がない」。28日に開かれた有識者らによる検討会の初会合で、専門家らから厳しい意見が相次いだ。

 「困難を抱え、偏見の中で生きる当事者にとって、表現しがたい悲しい出来事」。市側の説明後、元生活保護利用者の女性が口を開いた。「当事者からすれば、相模原殺傷事件の衝撃と同じぐらいのダメージ。『お荷物なんだ』ということが、どれほど前向きに生きようとするエネルギーを奪い、傷付けるか」

 市はジャンパーの文言に対し、受給者からの指摘はなかったとする。だが女性は「当事者にとって絶対権力者のケースワーカーに、『そのジャンパー変ですよね』と言える人がいるわけがない」とし、「受給者の声なき声が聞き取れる環境にならなければ、問題点は見えてこない」と訴えた。

 検討会で、市はジャンパー作成の契機となった傷害事件の概要を説明。アパートの契約更新を断られた受給者の男性に対し、市は無料低額宿泊所への入居を調整したが、男性は所在不明に。保護の要否が判断できなくなったとし、市は保護廃止を決定。納得できずに来庁した男性がつえやカッターナイフで職員を負傷させた。

 これに対し、ケースワーカー歴14年の森川清弁護士は「所在不明によって保護は必要ないという判断は推認できない」とする京都地裁の確定判決を示し、「判断自体、問題だった」と指摘。「本人の状態や説明で生活困窮が確認できれば、廃止を取り消すべき」とも述べ、「生活保護自体に対する知識や理解がなされていない」と強調した。

 一橋大大学院社会学研究科の猪飼周平教授は担当職員の課題について、「不正受給防止は生活困窮者に対する支援の手段の一つにすぎないのに、防止そのものが第一の目的に近い扱いになった」と指摘。傷害事件のショックを担当職員のみで解決しようとして他部署から孤立していた点にも触れ、「市民からの批判と擁護の声の間に存在する意見の分断をいかに克服するか(が重要)」などとした。

■世帯訪問時に職員8割着用

 ジャンパーなどを着用していた生活保護業務担当職員の8割近くが、受給世帯訪問時にも着ていたことが28日、市の調査で明らかになった。多くの職員がジャンパーや関連グッズを使うことに慣れ、文言を気に留めていなかったという。

 市が2007年度以降に在籍した職員75人に実施した調査結果(速報)によると、ジャンパーやポロシャツを着用した職員は53人。07年度は全員、08年度以降は35人で、このうち41人が受給世帯訪問時にも着用したという。

 約10年にわたり作成・使用していた理由で最多だったのは、「文言について気にしていなかった(慣習となっていた)」。特に08年度以降に配属された職員の過半が、こう答えた。

 一方、全職員(医療職を除く)1488人に実施したアンケートで、生活支援課への配属を希望すると答えたのは、回答者の1.9%。「仕事に対してマイナスイメージしか持てない」などが理由だった。ケースワーカーの仕事に対する他部署の理解では、担当職員の多くが「ないと感じている」とした。

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