港WORKER:港湾労働者の胃袋支える|カナロコ|神奈川新聞ニュース

港WORKER:港湾労働者の胃袋支える

独自メニューも提案 波止場食堂、中華店店長・篠塚公さん

完成した「船橋おこげソースラーメン」を手にする篠塚さん

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 横浜港の主力ふ頭として半世紀以上にわたり活躍してきた横浜市中区の山下ふ頭。ボリューム満点の料理を低価格で提供し、港湾労働者らの胃袋を支えている中華料理店がある。店長の篠塚公(ひろし)さん(61)は独創的なメニューを毎月考案しており、17日には千葉県船橋市のご当地グルメを元にした一品が登場。この一杯に、港湾人への思いとともに、船橋で暮らす家族への愛情を込めた。

 波止場食堂・山下中華店は360円のラーメンから横浜名物のサンマーメン、中華の丼物など10種類以上のメニューがそろう。横浜港内にある6カ所の波止場食堂の一つだ。

 運営するのは、横浜港で働く人々をサポートする横浜港湾福利厚生協会(藤木幸夫会長)。同協会では毎月18日を「波止場の日」と定め、昨年3月から毎月18日前後の1日限定でオリジナル料理を提供してきた。日替わりランチと同じ570円に価格を抑えているのが特徴だ。

 篠塚さんは1年間で最も寒い2月のメニューに、船橋市のソースラーメンを満を持して提案。試作を繰り返してオリジナル料理「船橋おこげソースラーメン」を完成させた。

 「ここは波止場なんだから、まずはボリュームがないとね」。麺の量を通常の1・5倍にして、1週間かけてつくり上げた自慢の自家製チャーシューを厚く切って載せた。

 野菜が不足しがちな港湾労働者のため、ソース味の野菜炒めを大盛りにした。食感を楽しんでもらうためキャベツ、ニラ、ニンジン、もやしを注文を受けてから炒めることにした。

 「まだ物足りない」。そこで、おこげを入れることにした。しょうゆ味の豚骨と鶏がらスープにソースを足したことで、焼きそばのような香りが楽しめる。

 船橋市は、実は、長女裕美さん(30)の嫁ぎ先。娘夫婦や6歳の孫と一緒に初めて食べたその味に感激した。「ソースの香りがラーメンに合い、おいしかった」。無心になって食べる孫の姿を見て「波止場でも喜んでもらえるに違いない」と確信した。

 茨城県取手市出身の篠塚さんは20歳から広東料理の老舗「中華菜館 同發」で下積みを続けた。その後、中華街大通りにあった広東料理の名店「太平楼」で日本人ではトップの副料理長にまで上り詰めた。

 山下中華店に来たのは12年前。横浜中華街で振るい続けた腕が、波止場で働く人たちの舌をうならせる。

 この日、「船橋おこげソースラーメン」を最初に注文したのは、羽田空港や横浜市内のホテルに珍味を配達するトラック運転手角能(かどの)義一さん(51)。週4回来店し、この3年間に8キロ太ったとか。「興味を引かれて注文した。初めての味でおいしく、また太ってしまう」と笑った。

 港湾でクレーンを動かす仕事に従事している横浜港荷役振興の鈴木博司さん(48)は「初めて食べる不思議な味。おこげが加わり意外と量が多くて、半チャーハンを付けなくてよかった」と額の汗をぬぐった。「おこげが好き」という倉庫事務職の若い女性は食べ残したが、予定していた40食は完売した。篠塚さんは閉店後、「みんな喜んで食べてもらえた。午後からもしっかり働けるのでは」と笑顔を見せた。

 36年目を迎えたこの店舗での営業は残りわずか。山下ふ頭の再開発に伴い、店舗が入居する山下厚生センターは取り壊され、店舗はふ頭内の別の場所に移転することが決まっている。

 かつて港湾労働者であふれたが、建設作業員や市民、観光客など客層が変わりつつある。篠塚さんは「自慢の価格と味で、いろんな人に訪れてもらえるメニューを展開したい」と夢見る。

 次回の「波止場の日」は3月17日。篠塚さんは、これまでにない斬新な丼物を考案中だ。

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