市の再発防止策「対症療法」 川崎中1殺害2年|カナロコ|神奈川新聞ニュース

市の再発防止策「対症療法」 川崎中1殺害2年

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件では、学校と外部の連携不足が指摘された。学校だけの対応には限界があり、市や市教育委員会は事件の芽を摘めなかった反省からスクールソーシャルワーカー(SSW)の活用や県警との情報共有などを進める。ただ、外部との信頼関係を築く手だてや地域を巻き込んだ試みが不十分で「対症療法」との指摘も。事件から2年、再発防止の取り組みは道半ばだ。

 予兆を察知し、事件を防ぐ機会はあった。

 2015年1月の始業式以降、男子生徒は不登校になり、担任教諭が面会を再三試みたが、本人と会えないまま事件が起きた。市教委は貧困や虐待など問題を抱えた児童生徒と家庭をサポートするため、外部の福祉機関との橋渡し役を担うSSWを各区に配置するが、男子生徒のケースでは学校からの派遣要請はなかった。

 また、事件の約1カ月前には男子生徒が主犯格の元少年=当時(18)=に殴られて負傷し、抗議しようとした別グループの少年らが元少年宅に押し掛けるトラブルが発生。川崎臨港署が対応したが、学校や市教委は把握していなかった。
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 「他校も含め、SSWの活用方法が理解されていなかった」。事件後、市教委が各校にSSWの役割を周知したところ、対応した校数や学校の訪問回数、支援した児童生徒数がいずれも増加した。月に3日以上欠席した場合は市教委の各区の担当者に報告する仕組みをつくったほか、学校数の多い川崎区のSSWを2人態勢に増員した。

 県警との連携も見直し、個人情報保護の観点などから見送ってきた学校警察連携制度の協定を15年10月に締結した。児童生徒の氏名、学年、住所などを含め、市教委は犯罪にあたるいじめや虐待などについて、県警は逮捕事案や被害に遭う恐れのある事案などについて、それぞれ情報提供。昨年の提供数は計41件だった。
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 事件を教訓にした市の再発防止策だが、元市立中学教諭で市教職員連絡会事務局次長の大前博さん(66)は「現場の声が反映されていない」と批判する。児童生徒のSOSを細やかに察知し、本人や保護者、外部との信頼関係を築くには、教職員にゆとりが必要だ。それだけに「教職員の負担が重い教育環境の見直しという根本に目を向けるべき」と訴える。

 県内で活動するSSWの一人も、学校は問題を校内で抱え込みがちだが、児童生徒や教職員と継続的に情報共有できる関係をつくるには「疲弊している現場の実情を変える必要がある」と強調する。

 「市の再発防止策はあくまで対症療法。学校や市教委だけでなく、より地域を巻き込んで考えるべきだった」と指摘するのは、市子どもの権利条例調査研究委員会の座長を務めた早稲田大の喜多明人教授だ。

 学校は自分たちで問題を解決しなければならないとの固定観念に捉われがちだが、地域全体で子どもを守るという意識改革が求められ、「子どもの境遇にあった多様な居場所が欠かせない」と強調。SSWなど児童生徒が安心してSOSを発信できる外部の目を養うとともに、フリースペースなどこぼれ落ちることなく学べる場所を多くつくった上で活用できるよう社会全体での取り組みが重要としている。

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