「避難指示解除」に渦巻く不信 安全の根拠なく住民ら

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/02/11 11:43 更新:2017/02/11 12:38
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小畑さん一家が20年暮らした家は解体された=2月5日、福島県富岡町(小畑さん提供)

小畑さん一家が20年暮らした家は解体された=2月5日、福島県富岡町(小畑さん提供)

 東京電力福島第1原発事故から間もなく6年。政府は、帰還困難区域を除く福島県内の避難指示解除を今月中旬にも最終判断する見通しだ。しかし、解除の法的根拠や汚染の基準は示されていない。原発2号機では毎時650シーベルトという過去最悪レベルの放射線量が推定されたばかりで、“廃炉前の要塞(ようさい)”は今なお深刻な状況が続く。「将来も安全なのか」-。その足元への帰還を促す政府決定を前に、住民たちは不信を募らせる。
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「帰還の妨げ」


 20年間住んだわが家はショベルカーで打ち砕かれ、跡形もなくなった。今月5日、小畑茂さん(57)は福島県富岡町の自宅の解体に立ち合った。変わり果てた家。妻まゆみさん(57)は「どうして、こんな目に遭わなければいけないの」と声を絞り出す。

富岡町地図


 福島第1原発から約8キロ。震災で自宅は半壊し、原発事故後に葉山町に一家で避難した。無人の家は半年で雑草が生い茂り、庭からは神奈川の100倍超の放射線量を検出。住める状態ではないと判断し、昨年に家財を処分、今年1月に解体を決めた。

 政府の原子力災害現地対策本部によると、昨年末現在、自宅解体の申請は富岡町だけで約1700件。1月29日、都内で開かれた同町民向けの説明会で配られた政府の資料には、こう明記されていた。〈帰還の妨げにならないよう、来年度以降も切れ目なく解体工事に着工予定〉
 住み慣れた「わが家」は今や「帰還の妨げ」なのか。小畑さんは憤る。「大切な自宅を好きで解体する人はいない。帰還の妨げになる、という政府の感覚が理解できない」

 そもそも事故の責任は東電と政府にある。「それなのに、事故後は住民を追い出し、今度は帰れという。住民の意思に関係なく、一方的に進める政府のやり方が納得できない」

だまされない


 避難指示解除の根拠や基準はどこにあるのか。

 大手メーカーの社員として第1原発の工事や点検に携わった横須賀市の佐藤信行さん(65)は、説明会で政府に問い掛けた。

 「再び大地震が来て建屋が崩れ、プールの水が漏れたら燃料棒はむき出しになる。そうなれば、安全の説明がつかないではないか」。第1原発1~3号機のプールには今も、使用済み核燃料が残されたままだ。佐藤さんの指摘に、政府担当者は「万全体制で対応する」と言うのみで具体策は口にせず。別の男性の「原発事故時にどう住民を守るのか」との質問には「検討中」と述べるにとどめた。

 2号機の原子炉格納容器下部では今月9日、毎時650シーベルトとの放射線量が推定された。数十秒の被ばくで死に至るレベルだ。

 小畑さんは言う。「事故前、政府や東電は『原発は絶対安全だ』と言い続けてきた。でも、それは間違っていた。根拠のない『安全』には、もうだまされない」。具体的な安全策が何も示されぬまま、避難指示が解除されようとしている。

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