若者たちから未来を予見 写真家・新井卓|カナロコ|神奈川新聞ニュース

若者たちから未来を予見 写真家・新井卓

会場で体験して

昨年、木村伊兵衛写真賞や神奈川文化賞未来賞を受賞するなど注目を集めている新井卓=横浜市民ギャラリーあざみ野

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 川崎市出身の写真家・新井卓(たかし)(38)の個展「新井卓 Bright was the Morning-ある明るい朝に」が、横浜市民ギャラリーあざみ野(同市青葉区)で開催中だ。「写真は過去のことしか写らないが、若い世代を撮ることで未来を予見する可能性があるかもしれない」と新シリーズに挑む新井に話を聞いた。

 代表作から新作まで251点を展示。昨年から取り組んでいる「明日の歴史」シリーズは、10代半ばの若者たちを撮影した肖像写真。会場には19点が並ぶ。

 広島・長崎の原爆投下にまつわる遺構や原発事故後の福島を捉えた作品から、核をテーマにしていると思われがち。だが本人は「結果としてそういうものが多くなっているだけで、全く意識していない」という。

 過去を写し取る写真を通して現状への危機感や思いを訴えてきたが、世の中がよくなっているとはとても思えなかった。例えば原爆について調べると、過去の話をたどることになる。全てを振り返る営みに少し疲れを感じた。

 「じゃあどうすればいいのかと。今まで起きたことよりこれから起きることに影響が与えられるのなら、それにも希望があるんじゃないか」と次世代を担う若者たちに目を向けた。

見えてきたもの


 ちょうど昨年7月の参院選で、選挙権年齢が18歳に引き下げられた。結果的に若い世代の保守的な傾向が顕著になり、ほとんどが自民党に投票していた。

 「17年くらいしか生きていない人が、いわばナショナリスティックな政党を支持する考え方をどこで手に入れたのか。どういう考えを持っているのか、直接話して知りたくなった」

 彼らを追い、撮ることで10年後、もしかしたらその先の日本の姿がなんとなく分かるのではないか。そんな意図を持って、これまでに広島、福島、東京、沖縄で13~17歳の若者37人ほどと出会って話をし、広島と福島では撮影も行った。

 保守的なのかは結局よく分からなかった。共通しているのが忙しいこと。ある福島の高校生は朝8時に家を出て登校し、部活をし、夜9時すぎに帰宅する。

 「常に親や先生といったヒエラルキーの中に置かれ、個人として思考する時間がない。彼らの生活サイクルがほとんどサラリーマンと同じということに、根深いものを感じた」

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