時代の正体〈440〉共謀罪考(下)歯止めなき「監視社会」|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈440〉共謀罪考(下)歯止めなき「監視社会」

ジャーナリスト 青木理さん

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/02/05 11:48 更新:2017/03/26 11:53
【時代の正体取材班=田崎 基】安倍政権が今国会に提出しようとしている「共謀罪」(テロ等準備罪)を新設する組織犯罪処罰法の改正法案。2003年から3度にわたり法案が提出され、そのたびに廃案となってきた。議論では数多くの識者が危険性を指摘してきたが、ジャーナリストの青木理さんは警察捜査を変貌させる恐れがあると指摘する。つまり秘密裏に行われてきた盗聴や尾行、監視といった捜査手法が公然と行われ、それはやがて社会を確実に萎縮させていく。

 国会の内外で、共謀罪の対象犯罪を絞り込むことや、共謀罪を成立させなければ本当に「国際組織犯罪防止条約」に批准できないのか、といった議論が始まっている。ただ、私は別の視点でこの共謀罪の危険性を指摘したい。

絞り込み作業の空虚


 刑事犯罪は基本的に「既遂」を罰する。一部に「未遂」、そして一部の犯罪についてだけ「準備」や「予備」段階を処罰する。

 ところが、共謀罪については未遂どころか、全く行われてもいない犯罪を取り締まる。ということは、いくら歯止めをかけようが、対象犯罪を絞り込もうが、準備行為を要件に入れようが、一番の問題は「国民への監視と管理がセット」になるということだ。

 これは起きていない犯罪を取り締まる、という特殊性からくる。だから対象犯罪を半減させた、4分の1にしたなどと、絞り込んでも歯止めにならない。

 怪しい、危険だと警察当局が判断した組織・団体・個人を日常的に監視しなければ、共謀段階の取り締まりなどできない。

 これは従来、公安警察がひそやかにやってきたことを、公然と普通の警察が日常的に行うことを意味する。つまり、特定の政党や宗教団体、過激派集団を危険だと認定し、日常的にその拠点や施設、関係者宅を24時間体制で監視し、出入りする者を片っ端から尾行したり、「協力者」という名のスパイをつくり出したりする。時には別件で令状を取って家宅捜索などを行い常時監視する。

 これまではこうした監視・管理は秘密裏に行われてきた。だが共謀罪が成立すれば、そうした手法は極めて広範な犯罪について行われることになる。ありとあらゆる市民活動が対象になり得る。警察当局が「危ない」「怪しい」とにらめば監視できてしまうからだ。

 これは警察当局による「内心、思想の監視・管理」を前提とする法律だということ。最も大きな問題はここにある。

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