時代の正体〈438〉共謀罪考(上)自由との境界壊す悪法|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈438〉共謀罪考(上)自由との境界壊す悪法

弁護士 海渡雄一さん

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/02/03 11:58 更新:2017/03/26 11:52
【時代の正体取材班=田崎 基】政府は今国会に、「共謀罪」(テロ等準備罪)を新設する組織犯罪処罰法の改正法案を提出する方針だ。これまで何度も議論され3度の廃案を経たが、政権は再びその成立をもくろむ。そもそも、なぜいま共謀罪なのか-。法案に詳しい海渡雄一弁護士は「まずはその危険性を知ってもらいたい」と言う。


 共謀罪は刑法の大原則である「既遂処罰」を根底から覆す。現行刑法は既遂を罰し、重大な犯罪は「未遂」段階を罰している。そして限られた最も重大な犯罪についてだけ「予備」や「共謀」も処罰している。既に予備や共謀について70程度の犯罪が規定されている。「共謀罪」はそれ以外にさらに600もの犯罪について未遂以前の段階を罰しようとしている。「必要ない」としか言いようがない。

心の中監視


 刑法における「犯罪の構成要件」とは、こういうことをやらない限り人間の行動は自由だ、という「自由との境界線」だ。共謀罪はこの境界線をぐっと引き下げることになる。

 国家が「あなたたちは、こういう悪いことを考えたり、人と話したりしてはいけませんよ」と市民の心の中に監視の目を光らせる社会になる。共謀罪の根本的な問題点はここにある。

 では実際に運用する際、どのように捜査するのか。共謀罪の捜査はまだ現実には何もひどいことが起きていない段階で行われる。警察は当然「これが職務だ」と言い始める。共謀自体が犯罪ということになれば、市民の会話や電子メール、携帯電話の通信の全部を監視しなければいけない、という話になる。

 これには既に布石がある。2016年に刑事訴訟法などが改正され通信傍受の対象が極めて拡大された。それまでは組織的殺人罪や薬物関連に限られていたが、傷害罪、窃盗罪、詐欺罪も盗聴の対象となった。

 この流れからすれば、共謀罪の成立によってさらに拡大しろ、という話になることは目に見えている。共謀罪は大変な監視社会を生み出しかねない。

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