時代の正体〈437〉私が黒岩知事の「心外」発言にこだわる理由|カナロコ|神奈川新聞ニュース

時代の正体〈437〉私が黒岩知事の「心外」発言にこだわる理由

【カナロコ・オピニオン】(13)デジタル編集部兼報道部・成田洋樹

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2017/02/02 09:03 更新:2017/07/14 12:47
やまゆり園再建を巡り異論が相次いだ1月10日の公聴会=横浜市神奈川区のかながわ県民センター

やまゆり園再建を巡り異論が相次いだ1月10日の公聴会=横浜市神奈川区のかながわ県民センター

 大量殺傷事件のあった相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」の再建構想について、県は策定時期を3月から今夏に延期する方針を明らかにした。1月10日の公聴会で障害者団体や有識者から「同じ場所での大規模施設の再建は時代錯誤」「県の議論の進め方は拙速」などと批判が相次いだため、方針転換を迫られた形だ。「心外」発言が物議を醸した黒岩祐治知事の「いろんな声に耳を傾けたい」という言葉の本気度が問われている。

 黒岩知事の発言が飛び出したのは、大規模施設再建への反対意見が噴出した公聴会翌日の1月11日。やまゆり園職員や家族会の意向を踏まえて「スピード感」を持って再建を決めた経緯を説明した上で、「(県が再建を決めた昨年9月から)これだけ時間がたった今、建て替えの判断そのものが間違っているのではないかと言われていることは、非常に心外」と不快感を示した。

 県民らの声を反映させるために県自ら開いた公聴会で出た意見を軽視する発言だった。異論をはねつけるような物言いをするなら、なぜ公聴会を開いたのか。再建構想取りまとめへの単なる「儀式」だったのか。障害者団体などが求めた対話にも県当局は公聴会時点で消極的な姿勢を示した。ことは、障害者福祉だけの問題ではない。多様な意見を尊重するという民主主義の問題でもあるのだ。

 そもそもなぜ多くの異論が噴出する事態となったのか。公聴会で発言したのは県内の主な障害者団体の代表や、県の障害者施策審議会や社会福祉審議会の委員らだ。県の障害者福祉行政を進める上でのキーパーソンから多くの反対意見が出るとは、思いも寄らない「想定外」だったのか。想定外だとしたら、障害当事者らと日頃どう向き合ってきたのかが問われよう。想定内だったのなら、多数の反対意見を押し切って予定通り3月に構想をまとめる算段だった、という疑問が生じる。

 いずれにせよ、神奈川の障害者福祉を担う人たちは置き去りにされ、当事者不在のそしりは免れないのだった。

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